欧州ではMTが当たり前、なぜ日本ではATが主流になってしまったのか?

更新日:2017/03/17

日本やアメリカではATが主流だけど、ヨーロッパではずっとMTが主流、とは昔からよく言われる話です。果たして現在でもそうなのでしょうか?そして同じようなクラスのクルマが走っている日本では、なぜATが主流になったのでしょうか?

「イージードライブ」アメリカで生まれ育ったAT

ATの歴史を遡ればアメリカで開発が進み、1940年代には実用化されて以後急速に普及した、という事実はすぐわかります。

ガソリンが安く、大排気量車をゆったりドライブするのがメインのアメリカでは初期のATでトルクコンバーター(トルコン)のスリップによる駆動ロスと燃費悪化はそれほど問題とならず、それより簡単操作でスムーズに走る「イージードライブ」が国民性にはピッタリとハマったのです。

しかし、それだけであれば、単にアメリカではATが主流で、それを搭載したクルマが発展しました、というだけの話に過ぎません。現実には、アメリカで売られるクルマと言えば日本車やドイツ車など多種多様ですから、それらの国でもアメリカでクルマを売るにはATを設定しなければいけません。

結果、ボルグワーナーなどアメリカの変速機メーカーからライセンスを購入したり、変速機そのものの開発を依頼したり、あるいは特許をかいくぐって自社開発したりと、相次いでAT車を投入しました。

日本車で言えば1958年には岡村製作所がミカサ•ツーリングに、1960年にはトヨタがトヨグライドをクラウンに搭載し、同時期にドイツでもメルセデス•ベンツなどが独力でATを開発するなど、1960年代には既に、ATはアメリカの専売特許どころか、どこのメーカーでもアメリカ市場に参入する限りATを大量生産するようになっていたのです。

しかし、その後欧州ではATは普及せず、日本ではATが急速に普及しました。この差はどこにあるのでしょう?

クルマは応接間じゃない!移動手段なんだ!という欧州

現在でも欧州のMT車比率は8割から9割と言われています。その理由としては3つあり、その1つが「燃費が悪く、価格も高いAT車を何で好き好んで買うのか?」という理由です。

割と最近までAT車が燃費で劣り、価格もMT車より高かったのは常識でしたから、この主張はある意味当然とも言えます。しかし、それだけでは単なる「安い車を買うために理屈をこねている」だけになってしまいますが、そうではありません。

日本同様、ガソリンを輸入に頼る事が多い欧州ではガソリン代が高いため、少しでも燃費がいいクルマに乗りたい事、そして渋滞が激しいわけでも無いので、ATの「イージードライブ」という恩恵にあずかりにくいため、ATにメリットを見いだせない時期が長く続きました。

そして、2つめの理由が、「ヨーロッパの人々にとって、クルマとは移動手段である」という事です。え?移動手段としか見ていないのは、イージードライブでクルマの運転を楽しまない日米の方じゃないの?と思うかもしれませんが、移動手段の意味合いが異なります。

無駄に豪華で新しいクルマをポンポン買い換える傾向のある日米のドライバーは、欧州の人々からすれば「なんでそんな、走る応接間みたいなものを買ってるの?クルマは移動のための手段だから、そのために必要な装置がついていればいいんじゃないの?」と感じるもので、全く話がかみ合わないというわけです。

最後にこれが最大の理由ですが、欧州ではクルマを買い換える頻度が低いことです。

古いクルマばかり走っているので旧式エンジンの排ガスによる汚染が大問題になったほど…。昔の動力伝達効率が悪く、燃費が悪い時代のATには乗らず、MT車にずっと乗っているのは当たり前になっているのです。

最新のクルマではそのような事も無いので、買い替えのタイミングでATを選ぶ事も増えており、富裕層の乗る大型車や高級車では既に過半数がAT車となっています。それでもMT車への想いは捨てがたいようで、イージードライブとダイレクト感や変速操作を両立できる、DCTなどセミAT車が発達したのも欧州の特徴です。

似たような環境の日本で大きく異なったのは「渋滞」

一方、日本も欧州と同じようにガソリンは高く、燃費の良い小型車が主流ですから、欧州と同じようにずっとMTが主流であってもおかしくありません。

しかし日本には、欧州のレベルでは考えられないほどの「慢性的な渋滞」という大きな違いがありました。高度経済成長期と共に爆発的に増加する自動車、狭い国土で進まない道路整備、都市部では朝夕のラッシュ時に猛烈な渋滞、それだけでなく、帰省や行楽シーズンには都市部以外でも何十km、時に百km以上の渋滞。

首都高などは慢性的な渋滞なので「低速道路」など揶揄されるほどで、日本のクルマは何よりも「真夏の酷暑の中でエアコンをかけながらノロノロ運転しても大丈夫な事」が重要なくらいでした。

おかげでオーバーヒート対策や電装系はすっかり強くなり、世界でも屈指の耐久性も手に入れましたが、MTについても独自の進化を遂げました。

ヨーロッパ系のクルマと日本車のMTの変速比を見るとわかりますが、昔ながらのミッションで小排気量車ほど、1速が2速と異様に離れたローギアードなのです。日本車以外でも、「スタート以外は1速など使わない」という理由でスタートダッシュに特化したレーシングパターンのMTはありますが、たまたまそれが日本の渋滞にマッチしたのでした。

気が付けばMT車がほとんど売られていない日本

ノロノロ運転でやたらと1速を多用し、シフトチェンジの楽しみなど味わう機会が少ない、となればMTのメリットはほとんど無く、ATが主流になるあたりは、欧州と同じような過程を経て真逆の結果にたどり着いた事がわかります。

それでも1990年代までは「ブレーキを離せば勝手に走り出すのが怖い」などの理由でMTが好き、というよりMTにしか乗れない人も団塊世代を中心に多かったのですが、その世代が引退する時代が来るとMTを忌避する理由も無くなります。

日本の各自動車メーカーもATという枠の中で燃費やレスポンスの向上に努めた結果、多段式ATもCVTも発展し、「エンジンの回転数を上げてからゼロ発進できるからスタートダッシュが速い」や「シフトチェンジでクルマを操る楽しさがある。」という以外にMTを選ぶ理由は無くなってしまいました。

クルマの主流もミニバンやクロスオーバーSUVで、スポーツカーに乗る人も少ないですから、クルマ作りもAT車が中心となり、今やMT車でも電子制御スロットルやトラクションコントロール搭載で「ドライバーはクルマに指示を出すだけ」になりつつあります。

つまり、たとえMT車であっても「かつてのMT車のようなクルマを操る喜び」は得られにくくなっているのです。商品性の問題でどうしてもMTを残さざるをえないクルマ以外は、今後の日本ではますますATが増えていく事でしょう。

MTで乗りたいスポーツカーたち

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参照:
web.peugeot.co.jp/web_magazine/backnum_0504/tips/index_03.html
www.aikeikyo.com/employer/0305.html
情報提供元: CarMe[カーミー]