6速、8速、10速…ATの段数は多い方がいいのか?

更新日:2019/01/04

日本では新車の98%がAT(オートマチックトランスミッション)といわれている。EV走行も可能なハイブリッドカーのように機構が複雑になると、そもそもMT(マニュアルトランスミッション)を組み合わせることは難しくなっている。また、昨今のハイパワーなスーパースポーツにATが増えてきているのは、性能を発揮するためにはATが適しているためだ。いまどきのATは人間がMTを駆使した走りを軽く凌駕するほどレベルアップしている。ATを「オートマ」と呼ぶとイージードライブというイメージが優先するが、ロジカルに機能を追いかけてもATを選択するという時代だ。

文・山本晋也

CVT以外のオートマは変速段によって分類できる

そのATは、大きく4種類に分けられる。MTをベースにクラッチと変速操作を機械が担うのが「ロボタイズドマニュアルトランスミッション(RMT)」と呼ばれるもので、採用例は少ないがシンプルで軽量なトランスミッションという特徴がある。

RMTと同じく変速段ごとにギヤセットを持つのが「DCT」。このアルファベットはデュアルクラッチトランスミッションの略称だが、奇数段と偶数段の2系統にわけることで変速時のトルク切れをなくすことができるのが特徴。伝達効率の面では理想的なシステムといえる。

日本車に多くみられるのが、向かい合ったプーリーと金属ベルトによって変速比を無段階に変えることのできる「CVT」。変速ショックがなく、また速度に応じて変速比を自在に制御できるため、エンジン回転数の面でいえばパフォーマンスを最大限に引き出せる。そうした特性から主に小排気量エンジンとの組み合わせで相性が良いといわれている。

最後に紹介するのが、オートマの最大派閥といえる「ステップ式AT」だ。複数の遊星歯車を組み合わせることで変速比を設定するもので、一時は過去のトランスミッションとなりかけたが、多段化・変速比幅のワイド化というトレンドに伴い、重量とのバランスから主役となっている。

エンジンとの継手装置(クラッチ部分)にトルクコンバーターを用いることから、発進時や低速走行においてスムースなフィーリングとなるのも美点であり、ステップATが評価されるポイントだ(なお、多くのCVTもトルクコンバーターを使っている)。

ステップATは8速が主流、多段化が進む

前置きが長くなったが、そういうわけで近年のオートマといえばステップATが主流となっている。

現在、乗用車用としてラインナップされているのは4速~10速。さすがに5速はほとんど見なくなってきたし、7速や9速といった奇数の変速段を持つユニットも少数派だ。乗用車の多くは6速や8速のステップATを採用している。

基本構造は前述した通りで、変速段が多くなるに従って遊星歯車の数が増える(ユニットが大きく、重くなる)傾向にある。10速ATがミドル級以上のクルマに使われることが多いのは、トランスミッション単体でのサイズや重量の関係もある。

タフネスを求められると段数が増えない傾向にある

そのため、全体としては多段化を進めるトレンドにありがながら、車格によってはあえて段数の少ないATを選ぶこともある。

その代表格といえるのが軽自動車だ。といっても軽自動車のほとんどはCVTで、ステップATを採用しているのは1BOXやトラックなどの商用車とその派生ワゴンばかり。乗用車ではジムニーが4速ATを組み合わせているのが目立つ程度だ。ちなみに、ホンダのアクティトラックはいまだ3速ATとなっている。

こうしたクルマが段数の少ないATを採用しているのは、そのカバーすべき速度域がさほど広くないこととフル積載や悪路など負担が大きいことが理由。軽自動車という限られたサイズの中でタフなトランスミッションを積もうとすると大きくしづらい。

また、いずれも販売台数規模が大きくないため、一度開発したトランスミッションを長く使い続ける必要があり、いつの間にか時代に後れをとっていたという見方もできる。

変速段の数が多いのには2つの狙いがある

さて、ATが多段化を進めているのには2つの狙いがある。そこでキーワードとして出てくるのが変速比幅だ。これはトランスミッションがカバーするギヤ比の上と下の範囲がどれだけ広いのかを示すもので、ローギヤの変速比をハイギヤで割った数字で示すものだ。

ジムニーの4速ATでは4.13となるが、かつては4.0台であることも多かった。しかし、いまでは8.0~10.0あたりの変速比幅となっていることも珍しくない。単純にいって4速ATを2つ足したくらいの変速比幅というわけだ。変速段を増やすと、ステップ比といって各変速段の差が小さくなるので、スムースにつながるといったイメージがあるかもしれない。

しかし、いまどきの多段ATにおいてはステップ比が接近しているわけではなく、あくまでも変速比幅を増やすための多段化といえる。多段化を進めると十分な発進加速を実現しながら、高速巡行ではエンジン回転を低く抑えて省燃費走行をしやすくなる。

ただし、段数が多ければ変速比幅が広いのかといえば、傾向としてはその通りだが、個別に見るとそうとは限らない。スポーツカーの中には変速比幅をさほど広げずに段数を増やすことで、エンジンの性能を引き出すよう、昔ながらの“クロスしたギヤ比”としているケースもある。

情報提供元: CarMe[カーミー]