温故知新…アルピーヌ・ルノーA110ベルリネットと新生アルピーヌA110を乗り比べ【後編】

更新日:2019/04/24

旧き佳き「ルノー・アルピーヌA110-1600S」と、今や日本でもスポーツカーファンを熱狂させている「アルピーヌA110ピュア」を乗り比べる。クラシックカーを愛してやまない筆者にとっては、旧A110の魅力をどれだけ現代に体現できているか否か?という命題ばかりが気になっていたのだが、実際に新A110ピュアを目の当たりにしてみると、クラシカルなだけに留まらず、新たな魅力を得ていることを実感させられた。

文・武田公実 / 写:S.Kamimura

新生アルピーヌ A110は往年の美しさを巧みに再現

新生A110のプロポーションは、RRとミッドシップの違いこそあれど、往年の美しさを巧みに表現したもの。旧A110のフランス車的エレガンスを引き継ぎつつも、単なるレトロ風に堕することなく、モダーンなスタイルを体現しているのは素晴らしいと言うほかない。

また、オリジナルA110のアイデンティティであった丸型4灯スタイルのヘッドライトや横長のテールランプも、最新のLEDでコンテンポラリーに表現している。加えて、ボディサイドに彫り込まれたくぼみやリアのエアインテークなどを控えめに表現しているのも、実に好ましいものとして映る。

そして、初回限定版「プルミエール・エディション」および「ピュア」に装着される伊・サベルト社製軽量スポーツシートのほか、天然皮革やアルミニウム、カーボンファイバーなどの高級マテリアルで設えられたインテリアも、往年のA110の血脈を感じさせるもの。

シートの表皮の一部にダイアモンド・キルトのレザーを使用するほか、ドアのインナーパネルの意匠にも共通の指向性を持たせるなど、オリジナルA110ベルリネットのスパルタンな雰囲気を、現代に上手く昇華していると言えよう。

新生アルピーヌA110ピュアのボディサイズは、ホイールベース2420mm、全長×全幅×全高は4205×1800×1250mm。

これは、旧A110ベルリネット1600Sのホイールベース2130mm 、全長×全幅×全高3850×1550mm×1118mm という圧倒的にコンパクトなサイズと比べてしまえば、大幅な大型化にも映るだろう。だが、周囲を走る自動車たちすべてが大型化された現代においては、相対的ながら旧A110と同じサイズ感と見るべきかもしれない。

また、今回の取材車両であるピュアでは1110kgとなる車両重量も、かつてのA110-1600S系の700kg前後という軽さには及ばないのだが、当代最新・最上のスポーツカーに相応しいパフォーマンスを賄うパワートレーンを搭載し、現代の路上における充分な受動安全性を満たすための剛性確保を思えば、最小限に抑えられたと認めたい。

一方、新A110に搭載される1.8リッターの直4ターボユニットは185Kw(252psを発生。これは当然ながら、今回のもう一台の取材車両でもある旧A110-1600Sに搭載されたゴルディーニ製4気筒OHV1.6リッターユニットの138psを大幅に上回るものである。

アルピーヌのスポーツカー像を浮き彫りにする二台


新旧アルピーヌA110を走らせてみると、明らかに似ているキャラクターが浮き彫りになってくる。まず同じ血統を感じさせたのは、エンジンのフィールである。絶対的な軽さゆえに、旧A110—1600Sのゴルディーニ・ユニットは低回転域からトルクフルに感じられる。また、エンジンと足裏が直結しているようなレスポンスは痛快この上ない。

その傍ら、ターボチャージャー付の新A110と言えば、実はこちらもレスポンシブ。ターボラグなどまるで感じさせず、アクセルを軽く踏んだだけでも豊かなトルクを引き出してくれる。そして4気筒らしい弾けるようなサウンドと、アクセル操作に即座に反応するレスポンスを味わいつつ走らせるのは、二台に共通する極上のスポーツカー体験と言える。

一方、乗る前の予測と最も異なっていたのは、操縦性である。旧A110のRRに対して、新A110はミッドシップであることから、走りのキャラクターも当然ながら異なるものとなるかと思いきや、意外にも似ている部分が数多く感じ取られたのだ。

RRスポーツカーと言えば今も昔も代表格であるポルシェ911が、RRのセオリーどおりコーナー前にしっかり減速し、曲がったあとのトラクションでスピードを復活させるドライビングスタイルを要求してくるのに対して、旧A110に乗ってみると、同じRRであっても格段にミッドシップ的であることが分かる。カーブでノーズを進行方向に向けたら、軽い車体が間髪入れずスッと旋回する。したがって、ミッドシップの新A110に乗り換えても、さほどの違和感を覚えなかったのだ。

しかし、新旧のA110で何よりも似ていると感じさせたのは、軽量でスパルタンなスポーツカーとしては例外的に優れた乗り心地であった。車体の剛性は、双方ともにそれぞれの時代の小型スポーツカーの常識を大きく上回るレベル。そして、必要以上に固くないサスペンションセッティングも、新旧アルピーヌA110に共通する。

思えば、長距離を走るラリー競技で勝つことに主目的とした旧A110は、ドライバーとコドライバーに一定以上の快適性を確保する必要があった。そして、その優れた資質を現代のテクノロジーで昇華した新A110は、結果としてポルシェのボクスター/ケイマンにも劣らない、日常使いにも適したスポーツカーとなっているという見方は、あながち間違いでもあるまい。

約半世紀もの時を隔てながらも、同じ南仏ディエップにて生産された新旧のアルピーヌA110は、アルピーヌの考える「スポーツカーの理想像」に、ただ一点のブレも無いことを証明してくれたのである。

アルピーヌ・ルノーA110ベルリネット【画像ギャラリー】

新生アルピーヌA110【画像ギャラリー】

情報提供元: CarMe[カーミー]