BMW・とは

BMW MINIは、かつてBMC/BLMC/オースチンローバー/ローバー等で生産されていたいわゆる「ローバー・ミニ」をモチーフとした新しい小型車として生まれた車である。
かつてMINIは英国車であったことから、BMW MINIも一部のバリエーションを除き生産はイギリスで行われている。
■ BMW MINI登場前夜
元々、クラシック・ミニの後継は全く違うモデルとしてとっくに発売されていた。1980年発売の「オースチン・メトロ」、のちのROVER 100シリーズである。
メトロはミニよりも実用性に優れ、かつ乗り心地もよく高性能であった。しかしミニの人気を凌駕することは出来ず、ミニよりも早く消えゆく結果となった。
この経緯はポルシェが911の人気の高さゆえに後継車を育てられなかったジレンマにも似ている。
1994年、BMWがMINIの商標を保有していたROVERを買収、これによりMINIブランドを含むROVERグループはBMWのものとなる。 このBMW資本の下、ミニの後継を模索するプロジェクトが進行して行く。
ミニには長い歴史の中で二つの大きな価値を持つようになっていた。
一つは元々設計時に意図された、限られたボディサイズに十分なエンジンを載せて大人四人を快適に運ぶというコンセプトから来る実用的な価値で、
もう一つはその愛らしいスタイルから来るキャラクター性、ファッション性としての価値である。
主にイギリス本国では前者が評価され、しかし40年程に及ぶ生産期間の中で実用的な価値は陳腐化し、目減りしていた。
特に日本等では後者が評価され、そのため末期のクラシック・ミニはイギリス本国よりも日本での方が多く売れていた程である。
1997年、ROVERがジュネーブモーターショーでMINIの後継を示唆したコンセプトカー、「スピリチュアル」「スピリチュアルToo」を発表した。
スピリチュアルは3ドアハッチバック、スピリチュアルTooは5ドアハッチバックでそれぞれエンジンはリアミッドシップレイアウトながらうまくメカニズムを床下に収め、スペース効率が非常に高かった。
外見はクラシック・ミニには似ても似つかず、大きさはクラシック・ミニに限りなく近く全長は3.1m、重量は700kg。まさにミニのキャラクター的価値より当初の実用的価値を継承する意味での後継モデルである。
一方、BMW側が主張したのはコンセプトよりもファッションやキャラクターとしてのミニの後継であった。
「スピリチュアル」と同じ1997年、かつてクラシック・ミニが活躍したことのあるモンテカルロ・ラリーで、ACV30というコンセプトモデルが発表される。
「スピリチュアル」「スピリチュアルToo」と同じミッドシップながら、そのレイアウトをスペース効率のためではなく運動性能のために使っており、ミッドシップスポーツカーであるMGFのフロアパンを用いたスポーティーで、そしてクラシック・ミニよりもだいぶ大柄のコンセプトモデルであった。
最終的にBMWに在籍していたフランク・ステファンソンによるスケッチがBMW MINIの原型になった。これは比較的BMW側のACV30に近く、しかし実用性も忘れていないスポーティーなハッチバックであった。
2000年、クラシック・ミニが生産中止となる。同年、BMWはROVERグループのうち手元にMINI等のブランドだけを残し、ほかを他社に売却した。これによりROVERは事実上、消滅した。
■ 初代
2001年、BMW MINIはついに発売。クラシック・ミニよりもボディサイズはかなり拡大、一般的なコンパクトカーと同等の大きさとなった。一方でフロントグリル形状や全体的なシルエット、丸型のヘッドランプ等、クラシック・ミニとキャラクターの共通性を感じさせるものであった。
日本には2002年3月2日(ミニ→三二→3月2日ということで「ミニの日」と称された)に導入。
初代のボディバリエーションはハッチバックとカブリオレであった。
エンジンはクライスラーとの合弁でブラジルで生産する1600ccのものを基本とし、
「MINI ONE」ではベーシックな構成で90psを、「MINI COOPER」にはNAのままハイチューンとし116psを、「MINI COOPER S」ではさらにスーパーチャージャーを付加することで170ps(前期型では163ps)を叩き出していた。
日本には導入されなかった「MINI ONE D」はトヨタ自動車からプロボックス&サクシード等に使われている1ND-TV型ディーゼルエンジンの供給を受けて搭載していた。
クラシック・ミニのゴーカートフィーリングと呼ばれた卓越したハンドリング性能はBMW MINIにも受け継がれ、運転は非常に楽しい。
「COOPER S」でもパワーは十分以上で、ちょっとしたスポーツカーのような走りを見せるが、2006年に限定販売された「COOPER S with JCW GP kit」はさらに過激なもので、ブースト圧を上げ最高出力は218psとなっている。さらに後部座席を撤去し2シーターになっており、その性能は最高速240km/h、0-100km/h加速6.5秒を誇る。
「COOPER S with JCW GP kit」は世界限定2000台、日本への割り当てはわずか160台であった。中古車市場ではめったに見ることが出来ない。
■ 二代目
2006年、BMW MINIは二代目にモデルチェンジ。
ボディスタイルは殆ど変更されず、詳しくない人が見れば見分けがつきにくい。フロントグリルの中にバンパーが通らない形になったのが一番分かりやすい違いである。
コンバーチブルは遅れてモデルチェンジされ、2009年に新型に切り替わっている。
ボディバリエーションは大幅に増え、従来からのハッチバック、コンバーチブルに加えてクラブマン、クロスオーバー、クーペ、ロードスター、ペースマンが追加された。
初代、二代目とも中古車として年式の割には安定した価格を保っているものの、登場から年数が経過し玉数も豊富なため仕様を細かく選ばなければ比較的買いやすい車種と言える。
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