【プロ解説】ホンダ CR-V e:FCEVとレクサス RZ。カーボンニュートラルゼロを目指す2台を徹底比較します

日本初の外部充電機能を備えた燃料電池車として登場したホンダCR-V e:FCEV。
同じ燃料電池車としてはトヨタ MIRAIがありますが、ここではバッテリー電気自動車(BEV)の「レクサス RZ 300e」をライバルにピックアップしました。
環境に対するアプローチこそ違いますが、価格をはじめボディスタイル、サイズ、ガソリンを使わないパワートレインなど、よく似た2台を全方位で徹底比較します。
- Chapter
- レクサス RZ 300e概要
- 燃料電池とバッテリーEV、それぞれのメリットとデメリット
- インテリアの上質感ではRZが上
- 最新の予防安全システムを装備
- 電動車のなかで、すば抜けて高い利便性がCR-V e:FCEVの魅力
レクサス RZ 300e概要
ホンダ CR-V e:FCEVのライバルとして取り上げるレクサス RZは、BEV専用モデルとして2023年3月にデビューしました。
プラットフォームには、専用のe-TNGAを採用し、バッテリーやモーターの最適配置による理想的な慣性諸元と、軽量かつ高剛性なボディを獲得しています。
ブランドのアイデンティティになっている"スピンドルグリル"はボディにまで発展。スピンドルボディとなり、BEVならではのシームレスな加速感とトルクフルな躍動感を表現しています。
くわえて高出力モーターのパワーを路面に伝える大径タイヤの四隅配置と、前後異形タイヤ採用による低重心なスタンスが走りの良さを予感させます。
パワートレインは、電気モーターと大容量リチウムイオンバッテリーの組み合わせ。2023年12月の一部改良では、FWDモデルのRZ300eをラインナップに追加すると同時に、全車に電池急速昇温システムを採用して、低外気温時に低下する充電速度の向上を図っています。

インテリアは、レクサス車のコックピット思想である「Tazuna Concept(タズナコンセプト)」を基本に、機能的本質を追求したシンプルなしつらえのなかにも、モノづくりの細やかさや上質さを感じられる空間とされました。
予防安全には、 プロアクティブドライビングアシスト[PDA]の支援シーンを拡大した最新の「Lexus Safety System+」を搭載。オプションで装着可能なドライバーモニターは、プリクラッシュセーフティ[PCS]、レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)、レーンディパーチャーアラート[LDA]、ドライバー異常時対応システムと連動して安全をサポートします。
また高度運転支援技術「Lexus Teammate(レクサスチームメイト)」には、アドバンスドライブ(渋滞時支援)とアドバンストパーク(リモート機能付)を採用するなど、レスサスでも最上級の安全装備となっています。
燃料電池とバッテリーEV、それぞれのメリットとデメリット
2台の新車価格は、CR-V e:FCEVが809万4900円。レクサスRZ 300eバージョンLは820万円です。*2025年3月現在
ちなみに環境性能に優れたクルマに交付されるCEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)は、FCVのCR-V e:FCEVが255万円、EVのRZ 300eは85万円と大きな開きがあります。
ボディサイズは、CR-V e:FCEVが全長4,805mm×全幅1,865mm×全高1,690mm、ホイールベース2,700mm。
RZ 300eは全長4,805mm×全幅1,895mm×全高1,635mm、ホイールベース2,850mm。
見た目にはそれほど変わりがありませんが、ホイールベースはRZ 300eのほうが長くなっており、1,000mm のカップルディスタンス(前後席間距離)を確保したゆとりある空間を実現しています。
パワートレインは、CR-V e:FCEVは最高出力92.2kW(125PS)の燃料電池(FC)スタックと、最高出力130kW(177PS)、最大トルク310Nmを発生する駆動用モーター、17.7kWhのリチウムイオンバッテリーという構成。
水素一充填あたりの走行可能距離は最大約621km(バッテリーによるEV走行可能距離約61kmを含む)。
対して、RZ300eは最高出力150kW(203.9PS)、最大トルク266Nmを発生するモーターに、総電力量71.4kWhのリチウムイオンバッテリーを組み合わせ、満充電時の走行可能距離は599kmとなっています。
どちらも東京〜大阪をノンストップで走ることができる走行可能距離ですが、EV充電スタンドは日本全国で2万5000以上の拠点が配備されているのに対し、水素ステーションは全国に約160箇所しかなく、東京、愛知、大阪、福岡などの大都市圏に集中して整備されているので、地方での利便性は圧倒的に劣ります。
ただし使用する燃料(電気)を満タンにする時間は、EVが数十分を要するのに対し、FCVは数分とガソリン車と同じ感覚で使えます。
インテリアの上質感ではRZが上
インテリアは、CR-V e:FCEVがシビックやZR-Vと共通する水平基調のデザインに、上質なしつらえと快適な使い心地を融合。
シートは、CR-V e:FCEVが運転席8ウェイ、助手席4ウェイの電動調整式シートに、表皮は合成皮革のプライムスムースを採用。運転席&助手席のシートヒーターに加えて、ステアリングヒーターを標準装備。
オーディオは12スピーカーのBOSEプレミアムサウンドシステムが標準装備です。
いっぽうRZ(300e バージョンL)は、クルマとドライバーが直感的につながり、より運転操作に集中できる「Tazuna Concept」をベースに、クリーンで開放的かつ上質なおもてなし空間を実現しています。
運転席・助手席ともに8ウェイの電動調整式で、シート表皮にはウルトラスエードを使用。
ステアリングヒーターにくわえて、シートヒーターはフロントだけでなくリアシートにも装備します。
オーディオは10スピーカーのレクサスRZプレミアムサウンドシステムを標準に、オプションとして13スピーカーのマークレビンソンプレミアムサラウンドサウンドシステムを用意しています。
ラゲッジ容量はRZ 300eバージョンLが522L。CR-V e:FCEVは、数値は公表されていませんが、水素タンクの存在によって容量はかなり小さくなっています。
それを補うため、フレキシブルボードで上下2段に分割したり、リアシートを倒すとフラットになるなど使い勝手が工夫されています。
最新の予防安全システムを装備

安全運転支援機能は、CR-V e:FCEVは衝突軽減ブレーキ(CMBS)をはじめ15の機能をパッケージ化したHonda SENSINGを搭載。
対して、RZ300eは最新のLexus Safety System+で、プロアクティブドライビングアシストの支援シーンの追加やドライバーモニターとの連携によるドライバーの運転状況に央いた最適制御などによりドライバーに手厚い支援を行います。
さらに、高度運転支援技術「レクサス チームメイト」の新機能「アドバンスドライブ(渋滞時支援)」も標準装備とするなど充実しています。
電動車のなかで、すば抜けて高い利便性がCR-V e:FCEVの魅力

RZ300e バージョンLが演出する高級旅館のようなおもてなし感が、CR-V e:FCEVにはやや欠けているように思えますが、プラグイン充電機能を備えるe:FCEVの利便性は、現在販売されている電動車のなかではずば抜けて高い実力であるのは間違いありません。