車いすのまま乗れる福祉車両(ウェルキャブ)15選|タイプや選び方、注意点も解説!
福祉車両(ウェルキャブ)には、ユーザー自身が運転するタイプと、車いすの方を車いすのまま乗せることができるもの、助手席や後部座席が車外へスライドして乗り降りを助けるものと、おおきく3つに分けることができます。
そのなかから、車いす利用者がそのまま乗り降りできる福祉車両について解説します。
編集部が厳選したミニバンおよび軽自動車のおすすめ福祉車両15台を紹介しながら、中古車で選ぶ場合のポイントについても解説していますので、中古車選びの参考にしてみてください。
- Chapter
- 車いす利用者が乗れる福祉車両には、2つのタイプがある
- 福祉車両は税金が安くなる
- 車いすのまま乗れるミニバンのおすすめ8選
- トヨタ ヴォクシー
- 車いすのまま乗れる軽自動車のおすすめ7選
- 車いすのまま乗れるワンボックス車両
- 福祉車両の中古車を選ぶ際に、気をつけるべきポイントとは?
- 用途や乗車人数、安全性などを考えて、最適な一台を選ぼう
車いす利用者が乗れる福祉車両には、2つのタイプがある
トヨタのウェルキャブ、日産のライフケアビークル、スズキ自動車のWITHシリーズなど、自動車メーカー各社は、身体が不自由な方でも簡単に移動できるよう、さまざまな艤装を施した福祉車両をラインナップしています。
そのなかで車いす利用者を乗せるための福祉車両は、車助手席やセカンドシートに移乗させるタイプと車いすのまま乗り降りできるタイプの2種類があります。
シートへ移乗させるタイプでは、シートが回転して車外へスライド&リフトアップすることで車いす利用者の乗降を簡単にします。
いっぽう車いすのまま乗り降りできるタイプは、車両リアのハッチゲートに設けられたスロープやリフトを使って社内に乗り降りします。
どちらも車いす利用者の移動を簡単にするものですが、介助する人にとって簡単なのは車いす利用者がそのまま乗り降りできるタイプです。
福祉車両というとハードルが高いように思えますが、いまや各メーカーから、さまざまなサイズの福祉車両が販売されており、家族構成や使用目的によって選べるようになっていますし、購入の際には自治体や国からの補助も受けることができます。
この記事では、そんな福祉車両のなかから車いすのまま乗り降りできる車両について紹介します。
※シートへ移乗させるタイプの福祉車両については、関連記事を参照してください。
福祉車両は税金が安くなる
国税庁のHPに『車いすや電動車いすを使用する者を、車いす等とともに搬送できるよう、車いす等昇降装置を装備し、かつ、車いすなどに必要な手段を施した自動車は、その車両に係る消費税が非課税になります。』とあるように、車いすを乗せることができる福祉車両は、購入時の消費税が非課税になります。
また自動車税環境性能割・自動車税種別割、軽自動車税、取得税の減免は、自治体によって異なります。
ちなみに東京都の場合は、申請により自動車税環境性能割・自動車税種別割の減免(全額)を受けることができます。
ミニバンのラインナップが充実
普通乗用車のなかでも人気のミニバンですが、福祉車両においてもラインナップが充実しています。
2023年現在、各社のラインナップは、トヨタは「ノア」「ヴォクシー」「シエンタ」の3車種、日産は「セレナ」「NV200バネット」、ホンダは「ステップワゴン」「フリード+」があります。
各社2台から3台をラインナップするのは、ボディサイズの違いや室内の広さ、装備の違いなどによるもので、ユーザーは環境に合わせて選ぶことが可能です。
軽自動車にも車いすのまま乗れる車種がある
軽自動車で車いすのまま乗車できるのは、背の高いいわゆる軽スーパーハイトワゴンです。
ホンダの「N-BOX」をはじめ、日産「NV100 クリッパー リオ」、ダイハツ「タント」「アトレー」「ハイゼット」、スズキ「スペーシア」「エブリイワゴン」、スバル「シフォン」「サンバーディアス」、マツダ「フレイル」など、ミニバン以上に豊富なラインナップとなっています。
車いすのまま乗れるミニバンのおすすめ8選
スロープで車いすを乗せられるミニバンには、「セレナ」に代表される2.0Lクラスと、「シエンタ」「フリード+」の1.5Lクラスがありますが、自動車税は減免制度があり、2.0L以下であれば0円で変わりません。
トヨタ ヴォクシー
2022年にデビューした新型ヴォクシーのウェルキャブは、タイプⅠとタイプⅡという2種類のシート配列に、タイプⅠには「車いす1名仕様」と「車いす2名仕様」が用意されます。
特徴は、エアサスペンション装備により車いす利用者の載せ降ろし時に車高を下げることができることと、前倒しスロープです。
リアの車高を下げることでスロープの角度は、車いす利用者が自走でも登れる9.5°に設定。電動ウインチも装備されているので、介助者も楽にサポートが可能です。
また前倒しスロープとすることで、車いすを載せた状態でもリアのラゲッジスペースが有効に使えます。
タイプⅠの基本シート配列は、車いす利用者を2列目の助手席側に乗車させるもので、リクライニング機構付車いすや電動車いす、シニアカーにも対応できる広さが確保されていることもポイント。
タイプⅡはサードシート位置に車いす利用者が乗車するレイアウトになります。
乗車定員は、タイプⅠの車いす1名仕様が6名+車いす1名。車いす2名仕様は、車いす1名仕様と同じ6名+車いす1名にくわえて3名+車いす2名としても使えます。
いっぽうタイプⅡは、通常のヴォクシー同様、2列目がキャプテンシートの7人乗りと、ベンチシートの8人乗りがあり、車いす利用者が乗車する際はサードシートが使えなくなります。
トヨタ シエンタ
トヨタ シエンタは、コンパクトなボディに3列シート備えたミニバンです。
現在販売されているモデルは3代目で、初代は2003年に発売。どの世代にも、福祉車両が用意されています。
2代目と3代目シエンタには、仕様によってタイプI、タイプII、タイプIIIの3つがあります。
もっともスタンダードな仕様がタイプⅠで、リアに手動式のスロープを備え、車いす利用者は助手席後ろの2列目部分に乗車します。
タイプⅡは、助手席を折りたたむことが可能で、運転席から手が届く1.5列目に車いす(おもにお子様向け)を固定できます。
タイプⅢは、室内の仕様はタイプⅠと同様で、リアのスロープを短くしたタイプです。
乗車定員は、車いす利用者を乗車させた場合はいずれも4名ですが、タイプⅠとタイプⅢには2列目に2名分のセカンドシートを備えた5名乗車仕様も用意されています。
ホンダ フリード+(2代目)
ホンダ フリードの車いす仕様車は、初代から用意されていて、2代目は5名乗りの「フリード+」をベースとしています。
センタータンクレイアウトによるホンダ独自の低床設計を利用した室内は、プリードのサードシート部分(ラゲッジスペース)に車いすごと乗車できる6人乗り仕様です。
車いすスペースには足もとにヒーターを備えるほか、電動ウインチも標準で装備するなど、利用者の視点に立った設計が魅力です。
現行モデルは2016年発売の2代目ですが、先代フリードにも車いす仕様車が用意されており、そちらにはサードシートを装備した7人乗り仕様(車いす乗車時は5人乗り)も発売されていました。
ホンダ フリード クロスター(3代目)
2024年に3代目へと進化したホンダ フリードの車いす仕様車は、クロスオーバーSUV的な外観のフリード クロスターがベースです。
室内は、5人乗車+車いす利用者の計6名乗車が可能。後席頭上にはリアクーラーと、車いす乗員の足もとにヒーターダクトを設置して快適な移動空間としています。
普段は荷室の床部分にフラットに収まっているスーパーフレックススロープは、車いすを載せた際には立てて格納。車いすを車内に引き込む電動ウインチには、2段階の速度調整と進路補正機能を追加して、介助者の負担を軽減しました。
日産 セレナ(スロープタイプ)
現行モデルが6代目となるセレナの福祉車両は、2代目モデルから用意されてきました。
現行モデルの特徴は、リアの車高が約80mm降下させることができる機構が付いたこと。これによりスロープの角度を11°として、車いす利用者の載せ降ろしを容易にしています。
室内は3列シートが基本となっており、車いす利用者が2列目に乗車してサードシートもある「車いす1名セカンド仕様」と、同じ構造ながら3列目にも車いす利用者が乗車できる「車いす2名仕様」、2列目のシートはセレナの通常モデルのままで、3列目に車いす利用者を乗せる「車いす1名サード仕様」など、豊富なバリエーションが魅力です。
また2名用シートを2列目にオフセットして3列目に車いす利用者を乗せる「車いす1名送迎仕様」も用意するなど、用途に合わせてぴったりの一台が選べます。
日産 セレナ(リフタータイプ)
日産 セレナには、大型のワンボックス車で使われる電動リフターを装備したモデルも用意されています。
このクラス唯一の電動リフター装備によって、セレナ(リフタータイプ)は大きめの車いすであっても、簡単に乗車させることが可能となっています。
乗車定員は最大6名です。
日産 NV200 バネット
商用バンとして活躍している日産 NV200バネットにも車いすを載せることができるライフケアビークル(福祉車両)が用意されています。
NV200の車いす仕様車は、6名+車いす、5名+車いす、4名+車いす2台という3つのタイプを用意。電動ウインチや固定装置も付いて、福祉施設の送迎などでも活躍しています。
またボディの全長がミニバンのセレナより短く、商店街の狭い道や入り組んだ道でも使いやすくなっていることもNV200 バネットの利点です。
NV200バネットは、2009年から販売されていることもあり、インテリジェントエマージェンシーブレーキを始めとした先進安全装備や、内部の意匠が年式よって変わっているので、細かい部分は実車で確認することをおすすめします。
ホンダ ステップワゴン
ホンダのミドルクラスミニバン、ステップ ワゴンは、2015年にデビューした5代目から車いす仕様車がラインナップに追加され、2022年発売の6代目にも用意されました。
5代目はステップワゴン、6代目はステップワゴン スパーダがベースになっており、いずれも2列目乗車、3列目乗車、2&3列目乗車の3タイプを設定。5代目のステップワゴン スパーダには2列目乗車タイプのみ用意されていました。
ステップワゴンのポイントは、ホンダ独自の低床フロアと床下収納できる3列目シートの存在。この3列目シートは、通常のシートとして使えるほか、3列目の車いす乗車時にも右側シートが使用可能で、介助者が隣に乗車できるよう配慮されています。
※右側シートを使用する場合は、車いすの横幅に制限があります。
全乗車位置で電動ウインチを標準装備しているので、車いすの乗降も容易です。
車いすのまま乗れる軽自動車のおすすめ7選
スロープ付きでリアハッチ部分から車いすごと乗り込める軽自動車には、数多くのバリエーションがあります。
ここでは、ホンダ「N-BOX」、ダイハツ「タント」と姉妹車のスバル「シフォン」、スズキ「エブリイワゴン」と姉妹車の日産「NV100 クリッパーリオ」、「スペーシア」について解説していきます。
ホンダ N-BOX スロープ
2011年の発売から現行の2代目モデルまで、軽自動車市場のトップを牽引し続けている人気車種がホンダ N-BOX。福祉車両は先代モデルのウィルシリーズから登場しています。
通常使用時は大人4人が快適に過ごすことができ、リアシートもリクライニングが可能。床下収納式のリアシートと、スロープが荷室の床になる構造なので、車いすを積載しないときも空間を広々と使えるよう工夫されています。
電動ウインチも装備して、普段使いから送迎までバッチリ使えます。
ラインナップも豊富で、G、Lという2つのグレードに、通常の660ccNAエンジンとターボ、2WDと4WDモデルも用意されます。
ダイハツ タント スローパー/スバル シフォン
2003年発売のダイハツ タントは、現在は2019年発売の4代目モデルが販売中です。2016年からはスバルにOEM供給されるようになりシフォンとして販売されています。
中古車では初代モデルのスロープ付きモデルも見られ、幅広い年式のものがあります。
現行のタント スローパーは、折りたたみ式のセカンドシートを備え、通常では4人、車いす乗車時は3人乗りとなります。
またリトラクタブル式スロープに電動ウインチを標準装備して、一人でも簡単に介助できるようになっていることがポイントです。
助手席にターンシートを備えたターンシート仕様は、スバル シフォンには用意がありません。
ダイハツ タント スローパー カスタムRS
タント スローパーには、カスタム系のRSをベースとしたモデルも用意されています。
リトラクタブルスロープや電動ウインチ、折りたたみ式サードシートなど、基本装備はタント スローパーと同じ。
タント スローパーでは標準装備になっている助手席と助手席シートバックのラクスマグリップがメーカーオプションなので、中古車購入時には注意が必要です。
スズキ エブリイワゴン/日産 NV100クリッパー リオ
1999年発売のスズキ エブリイワゴンは、現在2015年発売の3代目を販売中。福祉車両は先代モデルから用意されています。
なお、2013年からは日産 NV100クリッパー リオとしてもOEM供給されています。
エブリイワゴン福祉車両のポイントは、車いす利用者を含めて最大4名乗車が可能なところです。
運転席側リアシートをたたんで車いすを乗せることで、フロント2名と助手席側リアシート1名、車いすの合計4名での乗車ができます。
スズキ スペーシア
スズキを代表するトールワゴン「スペーシア」は、2013年に初代が発売されました。パレットの実質的な後継車ですが、エンジン、車体、車内寸法などすべてを見直し車名も、刷新されました。
発売の翌年には福祉車両のウィズシリーズにスペーシアの車いす移動車を設定。レーダーブレーキサポートをはじめとする先進の安全技術を全機種に標準装備していました。
現行型のスペーシアのデビューは2017年12月で、車いす移動車は翌2018年の2月に発売されました。
ボディが新しくなったスペーシアの車いす移動車は、車いすを載せるためのスロープをワンアクションで開閉できるテールゲート一体型スロープを採用するとともに、乗り降りをアシストする電動ウインチと、ワイヤレスリモコンを全車に標準装備したことがトピック。
後席は折りたたみ式とすることにより、通常時は4人乗車も可能としています。
車いすのまま乗れるワンボックス車両
トヨタ ハイエース、日産 キャラバンといったワンボックス車にも、車いすで乗車できるモデルが用意されています。
ワンボックス型の特長は、フロアがミニバンにくらべて高い位置にあるので、電動式のリフトが装備されていること。広い室内を活かして最大で10名の乗車が可能なこと。
ハイエース、キャラバンともに、ボディサイズは標準タイプと、ロングタイプの2種類が用意されており、大家族でも使えます。
福祉車両は、通常仕様のモデルと比べて特殊な装備を備えているため、どうしても価格が高くなりがちです。そのため、予算との兼ね合いで中古車を検討する方も多いでしょう。
福祉車両にかぎったことではありませんが、中古車を選ぶときには、新車と違って個々の状態が違うので注意が必要です。
走行距離や年式、修復歴の有無などを調べましょう。年式によって安全対策が異なりますので、その点も考慮します。
ここからは、福祉車両を中古車で選ぶ際の注意点を具体的に解説します。
福祉車両の中古車を選ぶ際に、気をつけるべきポイントとは?
車いすを引っ張ってくれる電動ウインチの有無
車いすを載せることができる福祉車両には、リアにスロープが用意されています。
実際に車いすを押したことがある方ならわかると思いますが、大人が乗った車いすは意外に重いものです。その状態で車いすごとスロープを上げるのは、結構な作業です。
女性ならなおさらで、予算が許せば車いすをモーターで引き上げてくれる電動ウインチ付きを選びたいところです。
車のシートのほうが乗り心地はよい
車いすを乗せるとき、車いすを専用のベルトで固定します。そのうえで、車いす利用者はシートベルトを使用します。
車いすのシートは車のシートより乗り心地が劣りますから、どちらかといえば近距離移動向きです。遠くまで移動するときは、座席に乗車することも視野に入れて車を選ぶようにするといいでしょう。
試乗するなど、車いすのまま乗ったときの乗り心地を確認してみましょう。
また載せる場所によっては、車いすが後ろに傾きすぎる車種もあります。床面がフラットなものは大型のワンボックスタイプ、ミニバンタイプでは若干後ろ側に傾いて載せることになります。
万がいちのときの安全性も考慮
福祉車両を中古車で選ぶ際は、専用のシートベルトがあるかなど、万がいちの安全性を確認することも重要です。
近年では安全性能が充実している車種も増えています。
たとえば日産 セレナには「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」が装備されていますが、セレナにエマージェンシーブレーキが装備されたのは2015年以降です。
購入するときはこれらの安全装備もチェックするようにしましょう。
用途や乗車人数、安全性などを考えて、最適な一台を選ぼう
車いすのまま乗れる福祉車両は、軽自動車からミニバンまでさまざまなバリエーションから選択することが可能です。
車いすを2台まで乗せられるものもあります。福祉車両の専門店もあるので、あらかじめチェックして購入しましょう。
ぜひ、今回ご紹介した中古車での福祉車両の選び方などを参考にして、最適な一台を選んでください。