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【プロ解説】あらゆる面で進化したGRスープラの最終型

トヨタ GR スープラ RZ (2024 改良型)

2019年1月に開催されたデトロイトモーターショーにおいて、豊田章男社長(現会長)の「SUPRA IS BACK」のかけ声とともに復活したトヨタ GRスープラが、2026年4月の生産終了を発表しました。

基本骨格となるプラットフォームをBMW Z4と共有するスポーツカーは、毎年のように改良を行い昨年末に最終型が発表されました。

これまでの総生産台数は、全世界で約1万5000台というスープラの最終モデルに試乗しました。

Chapter
ピュアスポーツカーとしての理想を追求したGRスープラ
2024年の改良で完成形にたどり着いたGRスポーツ
「もっとイイクルマをつくろう」をまさに具現化した最終型GRスープラ
惜しまれる生産終了の知らせ

ピュアスポーツカーとしての理想を追求したGRスープラ

現行型のトヨタ スープラ(A90)は、WRC(世界ラリー選手権)やWEC(FIA世界耐久選手権)などモータースポーツで活躍するTOYOTA GAZOO Racing初のグローバルモデルとして2019年に発売されました。

正式車名はスープラですが、スポーツカーブランド「GR」からの専売車種であったことから商品名は『GRスープラ』を名乗っています。

歴代で5代目にあたるGRスープラは、卓越したハンドリングや安定したコーナリング性能を実現するため、「ホイールベース」「トレッド」「重心高」の3つの要素にこだわって設計されています。

全長4,380mm×全幅1,865mm×全高1,295mmのボディサイズに、ホイールベースはトヨタ 86(ZN6型)よりも100mm短い2,470mm。ホイールベースとトレッドの比率はスポーツカーとしてトップレベルの1.55を実現し、優れた回頭性を発揮します。

また重心高も水平対向エンジンを積んだトヨタ 86より低く設定。同時にコーナリング性能にとって重要な要素である前後重量バランスは、スポーツカーの理想である50:50を実現しています。

パワートレインは、「RZ」に直列6気筒ターボエンジン「SZ-R」と「SZ」には出力の異なる2.0L直列4気筒ターボエンジンを搭載。駆動方式はFR(後輪駆動)のみ。トランスミッションはZF製の8速ATと、2022年に6速MTが追加されました。

2024年の改良で完成形にたどり着いたGRスポーツ

発売翌年の2020年4月に、RZに対して最初の一部改良を実施しました。

搭載する3.0L直列6気筒ターボエンジンは、最高出力を250kW(340PS)から285kW(387SP)へとアップ、最大トルクは500Nmのままですが発生回転域を1,600~4,500rpmから1,800~5,000rpmとワイドになっています。

ボディはフロントにブレースを追加して剛性の強化を図るとともに、サスペンションを最適化することで、コーナリング中の安定感を高めました。

2度目の改良は2022年7月で、AVS(アダプティブバリアブルサスペンション)の制御と、ショックアブソーバーの減衰特性チューニングによる、ロールバランスと乗り心地の向上。スタビライザーブッシュの特性変更による、操舵初期の応答性アップ。さらにシャシー制御系の見直しにより、操舵フィーリング、限界域でのコントロール性を向上させています。

またRZには、1本当たり1.2kgの軽量化を実現した新意匠の鍛造19インチアルミホイールを採用。バネ下重量軽減による乗り心地と操縦安定性の向上を図っています。

さらにRZに6速マニュアルミッション車が新設定されました。

2024年11月28日に、ふたたびRZの一部改良を実施しました。市街地からワインディング、サーキットまで存分に楽しめる「さらなる一体感のある走り」を追求した改良は、シャシー、足まわり、ドライブトレイン、ボディと多岐に渡っています。

まずシャシーは、リア床下ブレース構造を強化することにより、ボディ剛性を高めて、ダイレクト感やグリップ感、コントロール性を向上。EPS(電動パワーステアリング)の制御を最適化し、ダイレクト感のあるステアリングフィールを実現しました。

サスペンションは、状況に応じて減衰力を調整するAVSの制御を見直しつつ、フロントスタビライザーを強化。

前後スタビライザーブラケットはアルミ強化品に交換するとともに、フロントコントロールアームに強化ゴムブッシュを、リアサブフレームに強化ゴムマウントを採用することで、サスペンションとボディの一体感を高め、ロードインフォメーションをより伝わりやすくしました。

ドライブトレーンは、シャシーセッティングの変更にともない、アクティブディファレンシャルの制御を最適化して、ハンドリングを改善。ブレーキはフロントにブレンボ製大径ディスクブレーキを採用し、制動性能を向上させています。

エクステリアは、フロントタイヤスパッツの高さを拡大するとともに、ホイールアーチフラップと、ダックテールタイプのカーボンリアスポイラーを追加して空力性能を向上。ホイールカラーは、マットブラックに変更されました。

あわせてインテリアは、ドライバーシートにGRロゴ刺繍を施したアルカンターラ+本革表皮を使用。シートベルトに赤色を採用し、スポーティさを強調しています。

同時に全世界300台限定の特別仕様車スープラ“A90 Final Edition(ファイナルエディション)”には、同様のチューニングが施さました。

「もっとイイクルマをつくろう」をまさに具現化した最終型GRスープラ

トヨタ GR スープラ RZ (2024 改良型)

試乗したのは、2024年に改良を受けたRZの6MT車です。

走り出してすぐに感じたのが、乗り心地の良さです。約1年前に改良前のGR スープラ(6速MT)に試乗していますが、シャシー、ドライブトレーン、ボディ、ブレーキまで改良を受けた最終型は、別次元のクルマへと進化していました。

路面からの衝撃をサスペンションが和らげ、不快な振動が抑えられています。ハンドリング性能も向上し、ドライバーの思い通りにラインをトレースすることが可能です。同時にリアのスタビリティが向上しており、走行中リアタイヤがどのような仕事をしているのかを伝えてくれます。

ドライバーとクルマの一体感は、ステアリングの太さや重さまでこだわった結果です。

3.0lL直6ターボエンジンは、滑らかな吹け上がりを実現し、軽さを感じるほど。トランスミッションの6速MTは、カチッとしたシフトフィーリングを達成していて、リズムよくシフトチェンジを楽しむことができます。

惜しまれる生産終了の知らせ

トヨタ GR スープラ RZ (2024 改良型)

2019年のデビュー時は、じゃじゃ馬感の目立ったGRスープラですが、改良の結果、最終型RZは調教が積まれたサラブレッドのようにドライバーの思い通りに走行できる名馬へと進化しています。

2026年春で生産終了するGRスープラですが、非常に惜しい気がします。

萩原 文博|はぎはら ふみひろ

1970年生まれ。10代後半で走り屋デビューし、大学在学中に中古車情報誌の編集部にアルバイトとして加入。1995年より編集部員として本格的に参画し、2006年に独立。現在は、日本でもっとも多くの広報車両を借り出して取材を行うフリーランスの編集者として活動中。中古車の流通、販売店に精通した「中古車相場師」と呼ばれるいっぽうで、新車でもユーザー視点のバイヤーズガイドを中心に、人気車種の動向や流行りの装備の価値評価などを加味した買いのクルマ・グレードの紹介をモットーとしている。

萩原 文博|はぎはら ふみひろ

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