【プロ解説】GR同門対決!GRカローラとGRヤリスを比較。本当に速いのはどっちだ?
2020年に登場したトヨタ GRヤリスは、WRCを勝ち抜くために生まれたホモロゲーションモデルです。
全長4mに満たない3ドアのコンパクトカーにも関わらず、新車価格は448万〜533万円とミドルクラスSUVや高級ミニバンと同レベル。
同様のキャラクターで価格帯も近いとなると、国内では同じGRのカローラぐらいです。同じGRブランドのハイパフォーマンスモデルは、どちらが優れているのでしょうか。
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- カローラスポーツをベースに各部を補強したGRモデル
- GRヤリスよりもパワフルなエンジン
- 同じエンジンを軽量コンパクトなボディに積む進化型GRヤリス
- 販売台数の少ない両車。中古車市場でのプレミアム価格は必至!?
カローラスポーツをベースに各部を補強したGRモデル
競技のホモロゲーションモデルで、高性能エンジンと4WDシステムを搭載する車両となると、海外ではヒョンデやシトロエン、シュコダなどから販売されているものの国内には見当たりません。
そこで今回は、GRカローラとの同門対決を考えてみました。
Cセグメントの5ドアハッチバック、カローラスポーツをベースとするGRカローラは、2022年4月に世界初公開。
同年の12月に500台と、2シーターの“MORIZO Edition(モリゾウエディション)“を70台。さらに2023年8月に550台の抽選販売という、限られた人だけがステアリングを握ることができる希少車です。
TNGAによるGA-Cプラットフォームを基本骨格とするGRカローラは、ドライバーの操作へ俊敏に反応する走りを目指し、スポット溶接打点の増し打ちや、構造用接着剤の塗布長延長などでボディ剛性を強化。
くわえてリアホイールハウス間や床下トンネル、タンク前の床下にブレースを追加して操縦安定性能を高めています。
カローラスポーツに対して、フロント/リアフェンダーともにそれぞれ片側約30mm拡幅されたボディは、SMC工法で成形されたCFRP素材のルーフパネルを採用し、剛性を高めるだけでなく軽量化も図られています。
それにともないトレッドは、フロント60mm、リヤ85mmづつワイド化されています。
GRヤリスよりもパワフルなエンジン
搭載された1.6L直列3気筒ターボエンジンは、高出力化を目指し、エンジンの排気効率を向上。バルブ付き3本出しマフラーを採用することにより、排圧低減と消音性能を両立しています。
最高出力224kW(304PS)/6,500rpm、最大トルク370Nm/3,000~5,550rpmというスペックで、従来型GRヤリスに比べて、24kW高出力(GRヤリスは200kW/6,500rpm)で、最大トルクは発生回転数がワイド(GRヤリスは370Nm/3,000~4,600rpm)になっています。
ちなみにRZ“MORIZO Edition”では、最大トルクが400Nmまで向上。こちらは進化型GRヤリスと同じスペックです。
6速MTにはショートストロークのシフトレバーを採用。ステアリングから自然に腕を下した位置に配置することで素早いシフト操作を可能にしています。
駆動方式は、電子式多板クラッチによる前後駆動力可変システム採用のスポーツ4WDシステム「GR-FOUR」で、4WDモードセレクトスイッチにより、前後トルク配分を「前60:後40」「前30:後70」「(TRACK)前50:後50」の3つから選択することが可能。
足まわりは、ブッシュのピロボール化、スプリング、アブソーバー、アライメントの最適化にも取り組み、GR-FOURの駆動力配分を余すところなく路面に伝達。圧倒的な旋回性能を実現します。
さらにアクセル応答性やステアリング、エアコンの効きまで制御するドライブモードセレクトを用意して、ドライバーの好みや走行環境に応じて選択ができるようになっています。
同じエンジンを軽量コンパクトなボディに積む進化型GRヤリス
では、2024年に発表された進化型GRヤリスと、GRカローラを比較してみましょう。
まずボディサイズは、GRヤリスが全長3,995mm×全幅1,805mm×全高1,455mm、ホイールベース2,560mmで車両重量は1,280kg (MT車)です。
対するGRカローラは全長4,410mm×全幅1,850mm×全高1,480mmに、ホイールベース2,640mm、車両重量は1,470kgとなっています。
ホイールベースが80mm長いGRカローラは高い高速安定性を期待できるいっぽうで、GRヤリスはオーバーハングが短く旋回性が高そうです。
またトレッドは、GRヤリスのフロント1,535mm/リア1,565mmに対し、GRカローラはフロント1,590mm/リア1,620mmとワイドになっており、高い旋回性に寄与しています。
装着しているホイールサイズは、GRヤリス(RZ)が18×8J、GRカローラは18×8.5J。
タイヤはGRヤリスがミシュランパイロットスポーツ4S(225/40ZR18)、GRカローラはヨコハマアドバンAPEX V601(235/40R18)となっています。
エンジンは同じ1.6L直列3気筒ターボですが、進化型GRヤリスは最高出力が同じ224kW(304PS)/6,500rpmに、最大トルクはGRカローラを上回る400Nm/3,250〜4,800rpmにスープアップ。
駆動方式の「GR-FOUR」と呼ばれるスポーツ4WDシステムは変わらずですが、進化型GRヤリスはGRカローラ同様のドライブモードセレクトを用意。あわせてサーキットモードを選べるようになりました。
車両重量が190kgも軽いGRヤリスにハイスペックのエンジンを搭載しているのですから、走行性能は断然GRヤリスのほうが高くなるといえます。
一般道での印象は、荒々しさが目立っていた従来型GRヤリスに対し、進化型は走行性能を含めた全体的に性能が向上。GRカローラの安定感の高い乗り味に近づいているように感じました。
販売台数の少ない両車。中古車市場でのプレミアム価格は必至!?
新車時の車両本体価格は、GRヤリスの進化モデルが448万〜533万円で、GRカローラは525万円とわずかの差。
正直言っておおいに悩ましい選択ですが、うわさではGRヤリスの本年度分は完売。GRカローラも完売しているので、いまから探す人は中古車が中心になります。
ただし、現在、中古車市場に並んでいるGRヤリスは、進化前の従来型。さらにGRヤリス、GRカローラともにタマ数が少なく、市場ではプレミア価格が付いています。