【ライター解説】実用性はそのままに、走りが進化した2代目ホンダ・ヴェゼルを徹底解説【動画あり】

人気車種のホンダ・ヴェゼルがフルモデルチェンジして2代目に進化。先代は実用的なパッケージングが好評でしたが、果たして新型はどう変化しているのでしょう。
従来型とはまったく異なるシステムを組み合わせたハイブリッドの走りも検証してみました。
▼ヴェゼルの紹介動画はこちらをチェック!
【新型ヴェゼル】ホンダ 新型VEZELを土屋圭市と藤木由貴で徹底解説!新型ヴェゼル ハイブリッドモデルをドリキンはどう評価する?HONDA VEZEL e:HEV Z【車両レビュー・試乗レビュー】
初代の美点を継承した2代目

ホンダ・ヴェゼルは2013年に初代がデビューし、2021年春にはフルモデルチェンジして2代目が登場したばかり。
YouTubeチャンネルの「車選びドットコムYouTube」では、そんな新型ヴェゼルを土屋圭市さんと藤木由貴さん、そして工藤貴宏でチェックしました。
まずその歴史を振り返ってみると、初代モデルはとても高い人気を得たのを多くの人が感じていることでしょう。
2013年にデビューし、翌2014年から15年、16年と3年連続で、そして少し間を挟んだ後に19年にも「SUVとして日本国内で販売ナンバーワン」に輝いています。とにかく売れたのです。
何を隠そう、それは日本だけの現象にとどまりません。世界規模でみてもヴェゼル(一部地域の名称である「HR-V」も含む)は2020年に約54万台を販売。
この数字がどのくらいかといえば、同じ期間のスバルの全車種の生産台数が110万台ほど。ヴェゼルはたった1車種でその半分を作っていると考えれば、いかに人気があるモデルかイメージできるのではないでしょうか。
ちなみに、2020年にホンダ内における生産台数ランキングは、CR-V(約73万台)、シビック(約67万台)に次ぐ3番手です。ホンダにとっても重要な車種なんですよ。
そしてフルモデルチェンジした新型も人気を集めていて、グレードによっては納期が半年以上、仕様によってはさらに長くて1年以上というからスタートダッシュは好調です。

そんなヴェゼルですが、先代が人気を集めた理由はどこにあるのでしょうか?
実は、コンパクトSUVとして実用面でライバルを凌いでいました。具体的にいえば、後席空間と荷室スペースの2点がライバルよりも広かったのです。パッケージングに優れ、とても使い勝手のいいコンパクトSUVだったというわけ。たしかに、ユーザーとしては重要なポイントですね。
では、新型は果たしてどうでしょうか?
そんな部分にも注目しながら、新型ヴェゼルをチェックしていきましょう。
同じサイズなのに車格感がアップした車体

「品があるよね。質感があがった」と、外観を見るなり土屋さんからは好印象のコメント。
キープコンセプトではなくデザインのイメージを刷新したヴェゼルのスタイルは、新型になってとても伸びやかになりました。
フォルムは水平基調で、Cピラーを寝かせることで流行の「クーペスタイル」としています。コンパクトに凝縮された雰囲気の先代に対して、新型は立派で、ボディサイズは先代同様ですが車体がひとまわり大きくなったように感じますね。
伸びやかさや立派さを感じさせるひとつの理由が、ボンネット。先端をとがらせてより前方に伸びたことで、ボンネット長く見えるのです。
賛否両論を呼んでいるスタイリングですが、実車を見た印象は“かなり良い”。先代よりも高級感が増した感じですね。

さて、インテリアはどうでしょうか?
「メーターパネルはすっきりしていていいよ」(土屋さん)
メーターは中央から左が7インチ液晶になっていて、左側は表示を切り替えて各種情報を表示できるようになっています。ハイブリッドカーなのでタコメーターはなく、かわりにハイブリッドシステムの出力/回生を示すインジケーターが用意されていますね。
また、ナビによるルート案内中は、その誘導も表示することが可能です。
エアコン操作パネルは使いやすく改まった

「この辺が好き。わかりやすい」と土屋さんが示したのはエアコンの操作パネル。先代はタッチパネルでしたが、新型はダイヤル調整式に変化しています。
見た目や先進感はタッチパネル式が優勢ですが、タイヤルのほうが操作性はいいですね。エアコンの温度調整は運転中にも行うことが多いですが、そんなときに手元を中止せずに操作できるダイヤルはメリットが大きいのです。

先代から変更されているといえば、シフトレバーもそう。先代のハイブリッドは電子式の小型レバーでしたが、新型は一般的なタイプに。これに関してはどちらが操作しやすいかは好みの問題ですが、一般的なタイプのほうが落ち着く人もいるかもしれませんね。
パーキングは電動式。それ自体は昨今ではそれほど注目するポイントではありませんが、興味深いのはホールド機能のロジックを変えてきたことです。
ホールド機能とは、信号待ちなのでブレーキペダルから足を離しても前へ進むことなく停止状態を保持する仕掛けのこと。スイッチでオン/オフの切り替えができるのですが、従来はシステムを再起動すると「オフ」に戻ってしまいました。
しかし、新型はシステムを再起動しても前回と同じ状態になるように変わったのです。利用する人は、クルマに乗るたびにいちいち「オン」にする必要はないというわけです。
これまで、欧州車はシステム再起動(エンジン再始動)しても前回の状態を維持するのが一般的でしたが、国産車はそうではなくオフに戻るのが一般的でした(前回同様に戻るのは日産くらい)。どちらが便利かと言えば、間違いなく前回の状態に復帰するタイプでしょう。
驚かずにはいられない、2列目の広さ

「広い! 2列目は本当に広い!」
後席に乗った土屋さんが驚いたのは、その広さでした。何を隠そう、この足元スペースの広さはヴェゼルの真骨頂で、クラスナンバーワンです。先代よりも広がっていて、もはや「呆れるほど広い」といっていいほど。ここを魅力と感じてヴェゼルを選ぶのもアリですね。
もうひとつのヴェゼルの自慢でもある荷室も、テールゲートを開けた瞬間に驚くほどの広さ。荷室容量は、筆者の計測だと先代よりも奥行きは3cmほど狭まって先代よりも狭いのですが、とはいえこのクラスでは日産キックスに次いで2番手です。
広さとともに特徴的なのは、床の低さですね。ここまで低いのはちょっとスゴイ。加えて、壁のレバーを操作するだけでバタンとシートが倒れるのですが、その際は座面も沈み込んで低い床にフラットに収まるのだから見事としか言いようがありません。
新型は電動テールゲートを採用し、ボタンを押してクルマから離れると自動で閉じる便利機能も組み込んでいます。
爽快感がたまらないハイブリッド

さて、走りに行きましょう。
ハイブリッドシステムはフィットと同じタイプ。1.5Lの4気筒エンジンにモーターを組みあわせていて、基本的にモーターで走る日産の「e-POWER」に近いシステムですが、エンジン直結モードがあるのがe-POWERとの違いですね。時速60キロ以上の一部領域でエンジンの力を直接駆動力とします。
「1.5でもパワーがないって感じないもんね。凄いね」(土屋さん)
モーターはフィットよりも22ps上がった131psで、エンジンの106psを上回ります(モーター全力時に足りない分はバッテリーで補う)。
モーター駆動の特徴は滑らかに走ることで、スーッと加速する様子は一度味わうともう普通のガソリン車には戻れなくなりそうなほど。ただ、パワー感や爽快感はe-POWERのほうが上手ですね。
走行モードを「スポーツ」に入れたらどうなるか? 電子制御サスペンションは組み込まれていないので乗り味は変わりません。しかし、パワートレインの反応が違います。アクセル操作に対する反応がよくなり、伸びやかになるのです。
「まったく外してないね。進化している」土屋さんも驚きを見せていたのが印象的でした。

「(乗り心地の)質感も高い。とんがったところがないのがいいね。とっても穏やか」。
土屋さんは乗り心地も高評価。サスペンションがしなやかに動くのが、優れた乗り心地のポイントです。
さらに付け加えると、ハイブリッドはFFよりも4WDのほうがさらにしなやかで乗り心地に優れるので、乗り心地を求めて4WDを選ぶという選択もアリです。
後席が広くなり、実用的な荷室を備えるパッケージングは新型になってもユーザーの期待を裏切ることはないでしょう。そのうえで、走りが進化したのが新型になったヴェゼルの好印象なポイントでした。