【ライター解説】スポーツカーの血を引くSUV、ポルシェ・マカン。デザイン・走りから見える"ポルシェらしさ"を徹底解説!【動画あり】
スポーツカーメーカーが生み出したSUV。ポルシェの「マカン」はそんなクルマです。
スポーツカーを専門としていたメーカーが生み出したSUVは、果たしてどんなキャラクターなのでしょうか。その実力をチェックしてみましょう。
▼マカンの紹介動画はこちらをチェック!
【ポルシェの小さなSUV】ポルシェ マカンを土屋圭市と藤木由貴が徹底解説!Porsche Macan Reviewed by Keiichi Tsuchiya【試乗レビュー・車両レビュー】
ポルシェも販売の2/3がSUVという時代
ポルシェといえば、多くの人はスポーツカーメーカーだと認識していることでしょう。
ほんの20年前までは、ポルシェは(自社ブランドのモデルとしては)スポーツカーしか開発・製造していませんでした。
しかし2002年に「カイエン」という大型SUVを発表してSUV市場へ参入。
同社はここ10年で生産規模が3倍に増えていますが、今では生産台数の2/3がSUVといえば、ポルシェにおけるSUVのポジションがイメージできるのはないでしょうか。
「車選びドットコム」のYouTubeチャンネルでは、ポルシェのSUVの主力モデルとなっている「マカン」に注目し、チェックしてみました。
クルマ好きとして気になるのは、なんといっても「ポルシェらしいクルマに仕立ててあるかどうか?」ではないでしょうか。そのあたりもしっかり元レーシングドライバーの土屋圭市さんにジャッジしてもらいます。
ところで、ポルシェのSUVには大きなタイプと小さなタイプがあり、前者は「カイエン」。そして後者が今回紹介する「マカン」です。
カイエンの車体サイズが全長4.9m×全幅2mに対して、マカンは4.7m×1.9m。全幅は広めですが、全長は日産エクストレイルよりも短いほど。
決して小さくはないですが、大きくて苦労するほどのサイズでもないので、日本で多くの台数が売れているのも納得ですね。スポーツカー好きが日常用のクルマとして書くことも少なくないのだとか。
デビューは2014年。今回試乗したのは、もっともベーシックな排気量2.0Lの直列4気筒エンジンを積むモデルです。
SUVだけど、見るからにポルシェだと分かるスタイル
スタイリングからチェックしてみましょう。
デザインは、見るからにポルシェらしいですね。
フロントはボンネットに埋め込まれたようなヘッドライト、リヤは丸みを帯びたリヤフェンダーからテールゲートにかけての意匠が一見しただけでポルシェを感じさせるテイスト。
他のSUVとは明らかに違うオリジナリティがあり、「SUVではなくポルシェ」と主張しているのが伝わってきます。
土屋圭市さんも「しっかりポルシェだけど、ポルシェのオラオラ感がなくて好きだな」と好印象。SUVとなったことで、ポルシェの尖った感じがマイルドになっているといったところでしょうか。
そして注目したいのはブレーキです。
試乗車はオプションの「ポルシェサーフェスコーテッドブレーキ」が装着されていますが、これは鋳鉄製のディスクに硬いセラミックコーティングを施したもので、カーボンブレーキ並みの効きを実現しつつ価格はその1/3ほど、さらにはブレーキダストを減らし、寿命も長いというメリットも多いポルシェの独自技術。
それにしてもローターとキャリパーの大きさに驚くばかりです。
室内に乗り込んでみましょう。
水平基調のダッシュボードは、ポルシェの伝統。ボクスターなどポルシェのベーシック車種に共通する3連メーター(911など上位モデルは5連となる)は、真ん中を大型タコメーターとしたスポーツカーらしい組み合わせ。
このタコメーターは目盛りも大きくて見やすいから、エンジン回転数が瞬時に把握できます。その文字盤にデジタル速度計が組み込まれているのも、ポルシェのお約束ですね。
左が280km/hまで刻んだスピードメーター、右は情報を切り替えて表示するマルチディスプレイになっています。
もうひとつのポルシェらしさは、スキーのジャンプ台のように傾斜した、スロープ状のセンターコンソール。シフトレバーを高い位置にマウントして、そのまわりにエアコンの走行機能系のスイッチを集めています。
これは、911からEVのタイカンまで、最近のポルシェのすべての車種に共通するレイアウト。他ブランドとは明確に異なる独自のデザインですね。
後席は、ポルシェのSUVのなかでは小さなモデルだから狭いと思いきや、大人がしっかりと寛げるスペースが用意されているので実用性も高いといっていいでしょう。
よく考えてみれば、小さいタイプとは言いつつメルセデス・ベンツでは「GLC」、アウディでは「Q5」、そしてBMWでは「M3」に匹敵するクラスなのですから狭いわけがないですね。
走りはやっぱりスポーツカー。ドリキンも納得
それでは試乗してみましょう。
メカニズムはフォルクスワーゲングループのアーキテクチャである「MLB」を活用して作られ、何を隠そうプラットフォームやメカニズムの多くの部分はアウディQ5と共用しています。
駆動レイアウト的にはエンジンを縦置きとしたFFベースの4WD(スバルのレイアウトに近い考え)ですが、通常走行時の前後トルク配分は20:80とリヤ重視で後輪駆動車に近いハンドリングを実現しています。
滑りやすい路面やパワーを掛けた時などは、必要に応じてフロントのトルク配分を増やしていく制御になっています。
エンジンは全車ターボ付き。排気量3.0LのV6ターボ(354ps)や2.9LのV6ツインターボ(380~440ps)もありますが、今回の試乗車は2.0Lの直列4気筒(245ps)を積むベーシックタイプです。
最近の4気筒ターボは低回転トルクがあって実用的ですが、高回転の爽快感はあまりないのが一般的です。
しかし、マカンが積む4気筒ターボエンジンはそうではなく、回すほどにパワーが湧き出してくるので高回転の高揚感も十分。官能性の低い実用エンジンとは一線を画する、運転が楽しくなるエンジンに仕立てているのはさすがです。スポーツカーブランドらしいといっていいでしょう。
「パワーもこれで十分。大きなエンジンはいらない」と土屋さんも実力とバランスの良さに納得です。
走りのフィーリングはどうか。意外なほどに、スポーツカーらしい荒々しさはありません。
「しっとりしている乗り味。硬さもない」(土屋さん)
「優雅な気持ちになれる」(藤木由貴さん)
とかなり高評価。後席の乗り心地も良好でした。
ただし、ハンドルにあるダイヤルを回して走行モードを「スポーツ・プラス」へと切り替えるとキャラが変わります。
まず、切り替えた瞬間に音が勇ましくなって気分を盛り上げてくれます。音質も気持ちよく、うるさくない範囲でクルマ好きを高揚させてくれる音ですね。
そして「(モードを変えると)アクセルを踏んだ時の反応が全然違う」土屋さん。
アクセル操作に対するエンジンの反応がよくなり、加速が鋭くなります。電子制御ダンパーが切り替わってサスペンションの硬さも変化するので、乗り心地もちょっとゴツゴツくるようになりますね。
「コーナーもさすが。スッと曲がって回答性がいいからSUVじゃない感じだし、旋回中は凄く安定している」と土屋さんも納得です。
「味付けはさすがポルシェ。スポーツカーの血を引いているSUV。」
「SUVでもポルシェファンに対する期待を裏切っていない。」
土屋さんのそんな高い評価は、マカンはしっかり走りを楽しめるSUVであると判定したことの証といえるでしょう。マカンはSUVですが、その根底にあるのはしっかりスポーツカーの精神なのです。
マカンには「GTS」というハンドリングをさらに極めたグレードも存在します。次は、土屋さんにぜひそちらを味わってもらう機会を作りたいですね。