自動運転がどうしても勝てない相手は、あなたが雨の日に何気なく動かす「あの黒い棒」だった
最新の自動運転車ですら、いちばん苦手なのは「雨」。100年以上前から姿を変えずに働き続けるワイパーの歴史を、報われなかった発明家、10年に及ぶ法廷闘争、そして雨に弱い最新センサーを重ねて読み解く読み物。
- Chapter
- 誰も名前を覚えていない、いちばん働き者の部品
- 「ガラスをどう拭くか」が、10年をかけた法廷闘争になった
- 100年後、いちばん賢い車が、いちばん雨に弱かった
- なぜ人間は、大雨でも平気で運転できてしまうのか
- 次に雨が降ったら
2026年の車の話題は、どれもきらびやかだ。
名古屋では、車を模したAIキャラクターが乗客に話しかけ、おすすめの過ごし方を教えてくれる自動運転の実証実験が始まる。東京では、ハンドルを握る人のいないロボタクシーの主導権を、国内外の巨大企業が奪い合っている。
車はいま、人間を見て、人間に話しかけ、乗客のブランドを握ろうとしている。技術のニュースだけを追っていると、車の進化にはもう死角がないように見えてくる。
ところが、その最先端の群れが、いまだにきれいに解けていない相手がいる。
雨だ。
そして雨と戦う道具は、100年以上前からほとんど姿を変えていない、あの黒い棒である。フロントガラスの下で、きき、ききと左右へ往復する、ワイパー�fのこ
誰も名前を覚えていない、いちばん働き者の部品
車に詳しくない人でも、ワイパーの存在は知っている。というより、普段に当たり前すぎて、部品として意識したことすらないかもしれない。
雨が降ってきたら、右手でレバーをひとつ動かす。それだけで視界が戻る。強く降ってきたら速く、小雨になったら遅く!もはや思想てもいない。信号や全方位に注意した、上の方の処理は、普段は大して考えない。
けれど、この「当たり前」が発明されたとき、世の中はまったく評価しなかった。
ワイパーの原型を考えたのは、アメリカのメリー・アンダーソンという女性である。1902年の冬、彼女はニューヨークで路面電車に乗っていた。窓の外は雪。運転士は岐路が見えず、たびたび電車を停止しては、窓を開けて身を棒し出し、手で雪をぬぐっていた。開けた窓から本部風に車内に促し、冬憂。車内に吹き込む冷たい風の中でいは揺れていた。
彼女は考えた。運転士が席に座ったまま、レバーひとつで窓の外側を抜いたら良い。手は据えなければならない
「ガラスをどう拭くか」が、10年をかけた法廷闘争になった
100年後、いちばん賢い車が、いちばん雨に弱かった























