EV界の黒船がやってきた!? BYDの実力が凄い
BYDは、バッテリーとEV生産を中心とした中国のグループ企業です。
すでに大型EVバスの分野では日本に浸透しており、今年になってミドルサイズSUVの「ATTO3」やコンパクトな「DOLPHIN」といった乗用車をデビューさせてきました。
またジャパンモビリティショーでは、全長4.8mのセダン「SEAL」の2024年春発売(予定)も発表するなど、今後の展開が楽しみなメーカーです。
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- 中国のテスラ?深圳に本社を置くEVメーカー
- モジュール化でさまざまな車種を展開
- 450万円を切る価格と広い室内「ATTTO3」
- 日本のマーケットを研究した小さな黒船
- ジャパンモビリティショー2023で公開された注目の2台
中国のテスラ?深圳に本社を置くEVメーカー
BYDグループを簡単に調べてみると、創立は1995年で中国のシリコンバレーと呼ばれる広東省深圳に本社をおいています。
バッテリーメーカーとして発足し、創業者の王伝福(ワンチュアンフー)会長は、蓄電池の研究を続けていて中国では電池大王と言われているような人です。
現在では、総合的なソリューションを開発する『ITエレクトロニクス』、ゼロエミッションの統合的な新エネルギーを開発する『新エネルギー』、あらゆるモビリティを電動化する『自動車』、渋滞などの社会問題を解決する『都市モビリティ』の各分野で事業を展開しています。
そのなかの『自動車』は4つの事業をすべて集約した技術の集合体で、日本で走ってるEVバスの7割がBYD製です。
今後は、乗用車をはじめ、タクシー、物流車両、ゴミ収集車、建設車両などもBEV化していく予定。また携帯電話の2台に1台はBYDパーツが搭載されているなど、私たちの生活に浸透しています。
以下では、現在日本で発売されているミドルサイズSUVの「ATTO3(アットスリー)」とコンパクトクラスの「DOLPHIN(ドルフィン)」について解説しましょう。
モジュール化でさまざまな車種を展開
「ATTO3」と「DOLPHIN」の共通点は、『ブレードバッテリー』と名付けられたリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを搭載していることです。
内部はブレード(刀)状のセルで構成され、大型の釘をさしても発火せず表面温度も変わらないという高い安全性が特徴。8年間/15万キロという保証期間にもBYDの自信が表れています。
ブレードバッテリーを前提に設計された共通のプラットフォーム『e-platform3.0』は、高度な車体剛性と安全性を実現しました。
『8in1パワーシステムアッセンブリー』と名付けられたパワートレーンは、EV(電気自動車)に必要な駆動モーター、モーターコントローラー、トランスミッション、車両コントローラー、バッテリーマネジメントシステム、DCコンバーター、オンボード充電器、高電圧配電モジュールを一体化したもので、スペース効率とエネルギー効率を大幅に高めています。車両の駆動や情報を緊密に統合したシステムです。
450万円を切る価格と広い室内「ATTTO3」
「ATTO3」のボディサイズは、全長4,455mm×全幅1,875mm×全高1,615mmで、日本ではコンパクトサイズとミドルサイズの中間にあたる大きさのSUVです。
総電力58.56kWhのバッテリーを搭載し、モーターは最高出力150kw(204PS)、最大トルク310Nmを発生。
駆動方式はFFで、一充電による航続距離はWTLC方式で470km。日本の急速充電規格CHAdeMOにも対応しています。
室内は5人乗り。荷室は通常使用で440L、リアシートを倒した状態では1,340Lという大容量を確保。
安全・運転支援システムには、ブラインドスポットインフォメーションやアラウンドビューシステム、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシスト、車線逸脱警告、車線逸脱防止、レーンセタンリングコントロール、リアクロストラフックブレーキ、自動緊急ブレーキ、前方衝突予測警報などが搭載されています。
その他室内には、縦でも横でも使える回転式の12.8インチタッチスクリーンを装備。専用のスマホアプリと連携するコネクティッド機能も当然のように搭載されています。
ボディカラーは、フォレストグリーン、サーフブルー、スキーホワイト、パルクールレッド、ボルダーグレーの5色。
価格は440万円〜で、CEV補助金は最高で85万円補助されます。
日本のマーケットを研究した小さな黒船
「DOLPHIN」は、全長4,290mm×全福1,770mm×全高1,550mmのコンパクトカーです。
こちらは、総電力量44.9kWhのバッテリーに最高出力70kW(95PS)、最大トルク180Nmのモーターを組み合わせ、一充電あたりの航続距離400kmの”DOLPHIN”と、バッテリー総電力量58.56kWhに最高出力150kW(204PS)と最大トルク310Nmを発揮するモーターを組み合わせ、航続距離476kmの”DOLPHIN Long Range”という2つのグレードが用意されます。
面白いのは、同じモデルながらモーターパワーによって、リアサスペンションの形式が異なること。
パワーの低いDOLPHINにはスペース効率に優れ、欧州のコンパクトカーも多く採用するトーションビーム、大パワーで車重も重いDOLPHIN Long Rangeはマルチリンクにを使います。ちなみにフロントサスは、どちらもマクファーソンストラットです。
安全運転支援機能は今日的なもので、車線逸脱警告&防止、緊急時レーンキープアシスト、ブラインドスポットインフォメーション、交通標識認識システム、フロントクロストラフィックブレーキ、アダプティブクルーズコントロール、幼児置き去り検知システムなどにくわえ、日本仕様には誤発進抑制機能もきちんと装備されます。
またウインカーレバーも日本車同様、ステアリングの右側に装着されるなど、日本のマーケットを研究した装備になっています。
価格は「DOLPHIN」が363万円、「DOLPHIN Long Range」は407万円です。CEV補助金は最大で65万円どちらも補助されます。
ジャパンモビリティショー2023で公開された注目の2台
「DENZA D9(デンツァ D9)」は、メルセデスベンツと共同開発をしたプレミアムブランド「DENZA」のMPVです。
ボディサイズは、全長5,250mm×全幅1,960mm×全高1,920mm、ホイールベース3,110mmというもので、トヨタ アルファードよりもひと回り大きな室内に3列シートを備えます。
足まわりには「Disus インテリジェントボディコントロールシステム」というBYDオリジナルの電子制御サスペンションシステムを搭載。駆動方式は4WDで、BEVとPHEVが用意されるということですが、いまのところ日本での発売は未定とのことです。
もう一台の「YANGWANG U8(ヤンワン U8)」は、BYDのプレミアムブランド「YANGWANG」が作るSUVです。
こちらは日本での発売は予定されていないそうですが、世界初の量産型4モーター独立プラットフォーム技術『e4 プラットフォーム』を採用して、モビリティーショーでは360°ターンを披露していました。
4つの独立したモーターによる最高出力は809kW(1100PS)以上。車重が気になりますが、各輪ごとに細かい制御ができることによる高い走破性は、内燃機関を積む車よりもメリットが高そうです。
モーター、バッテリーはもとより制御モジュールやプラットフォームまで、EVに関するパーツをすべて自社で手掛けることができるBYDグループ。テスラに続くEVメーカーとして注目しておきたい企業なのです。