小さくて便利。要介護者が車いすごと乗れる軽自動車10選

車いす利用者をそのまま車内に乗せて運ぶことができる福祉車両は、軽自動車から大型のワンボックスまで幅広く用意されており、乗車定員もボディサイズに応じてさまざまです。
そのなかで、もっともコンパクトで使いやすいのが軽自動車をベースにしたモデルです。
ここでは車いす利用者を乗せることができるおすすめの軽自動車を10台紹介します。
ほとんどの軽福祉車両は車いすを乗せると定員が3名になる

車いす利用者を連れ立ってクルマで出かけるには、車いすごと車内に乗せることができると便利ですよね。
ひと口に車いす利用者を乗せられる軽自動車といっても、おおくは通常時の乗車定員と車いす乗車時の定員が異なるので注意が必要です。
一般的に軽自動車の乗車定員は4名ですが、車いす利用者を乗せる場合、リアシート部分に車いすを固定するため、多くのモデルはフロント2名+車いす利用者の3名になります。
家族がそれよりも多く、車いす利用者をふくめて3名以上で移動したい場合は、3列シートをベースにしたミニバンタイプを選ぶと良いでしょう。
また車いすのサイズによっては乗せることができない車種があるので、事前のチェックもしておきたいところです。
現在、車いすを利用者が座ったまま車内に乗せられる軽自動車は、ダイハツ、スズキをはじめ、ホンダ、スバル、日産、マツダなどに用意されています。
以下では、編集部おすすめの9台を紹介します。
おすすめ軽自動車10選
ダイハツ タント/タントカスタム スローパー

ミラクルオープンドアで人気のダイハツ タントには、2006年から車いす利用者を乗せることができるタントスローパーが用意されています。
現行型のタントスローパーは、リアにベンチシートを装備して、通常時は4名乗車、車いす乗車時は3名乗車という設計。
リアシートを取り外しやすい設計にして、子供用自転車ならそのまま車内に載せることができるなど、使用シーンにあわせて車内のアレンジを可能としたことがポイントです。
車いす用の電動ウインチベルト、リアヒーターダクトを備えるほか、通常時は前倒しで格納できるリトラクタブルスロープを採用。
直列3気筒660ccエンジンは、ターボなしとターボ付きが選べます。
スズキ スペーシア 車いす移動車

パレットの後継車として2013年に発売されたスズキ スペーシアは、発売直後から車いすを載せることができる“車いす移動車”を設定し、2代目となった現行型でも用意されています。
スペーシア 車いす移動車のポイントは、一体型の車いす用スロープを備えていること。これによりハッチゲートを開ければ、あとはワンアクションでスロープが設置できます。
現行型の駆動方式は、FFと4WDから選ぶことが可能。パワートレインは、660ccのマイルドハイブリッドなので、発進時のもたつきもありません。
電動ウインチやリアヒーターダクトのほか、空気を循環させて車内温度のかたよりを防ぐサーキュレーターも装備(HYBRID X)するなど、後席の環境を考えた装備が嬉しいポイントです。
乗車定員は、通常が4人、車いす乗車時は3名。
スズキ エブリイ 車いす移動車

商用軽自働車スズキ エブリイの車いす移動車は、先代にあたる5代目で初めて登場しました。
当初よりリモコンで操作できる電動ウインチを標準装備して、介助者の負担を軽減。
またリアシートを左右分割式とし、車いす乗車時の定員が4名となっていることもエブリイの特徴です。
現行型は2015年の登場で、リアゲートの開口部と一体型スロープによってスロープの角度を緩めて移乗を容易にしたことがポイント。
衝突被害軽減ブレーキをはじめとする先進安全技術を標準装備しました。
パワートレインは、吸気側のみ可変バブルタイミング機構のVVTが装備された660cc直列3気筒の自然吸気エンジンにCVTの組み合わせ。
2024年以前のモデルは、マニュアルトランスミッションをベースに2ペダル化した独自の5AGSを組み合わせます。
また通常の2WDにくわえ4WDモデルも設定し、降雪地帯の需要にも応えています。
スズキ エブリイワゴン 車いす移動車

スズキはエブリイワゴンにも車いす移動車を設定しています。
リモコンで操作できる電動ウインチやリアシートを左右分割式とし、車いす乗車時の定員が4名となっているのは、エブリイと同様。
衝突被害軽減ブレーキをはじめとする先進安全技術の標準装備も変わりません。
変わるのは、可変バブルタイミング機構のVVTを装備した660cc直列3気筒エンジンがターボになること。
さらにスライドドアクローザー、フルオートエアコンなど便利装備が追加されます。
駆動方式は、エブリイ同様に2WDと4WDが設定されます。
ホンダ N-BOX+ 車いす仕様車

2012年に発売されたホンダ N-BOX+/N-BOX+カスタムにも、”車いす仕様車”が用意されました。
N-BOX+ 車いす仕様車の特徴は、リアシートの格納をダイブダウン方式としたことと、リアゲートのデザインをノーマルモデルと違え、車いす利用者の乗降をスムーズにしたことです。
また3段階スライド式のアルミスロープを採用することで、車いす利用者が乗車しないときはアルミスロープを床下に収納することが可能となっていること。
これにより、車いす利用者を乗せないときは、フラットな荷室を実現。ラゲッジスペースに荷物を乗せやすくなっています。
乗車定員は、ライバル同様、通常時が4名、車いす乗車時は3名。電動ウインチを標準装備して、車いす利用者の乗せ降ろしも容易になっています。
N-BOX+のパワートレインは、自然吸気のみ。、駆動方式は2WDと4WDが選べます。
リアカメラにスロープを使うときのガイドラインを表示できるほか、先進安全装備のHonda SENSINGを装備することもポイントです。
ホンダ N-BOX 車いす仕様車

2017年にモデルチェンジを行い2代目に進化したホンダ N-BOX/N-BOXカスタム。福祉車両は、翌年の2018年4月に発売されました。
レギュラーラインナップ同様、安全運転支援システムのHonda SENSINGを標準装備したことがトピック。
さらに車いす利用者が乗車できるスロープ仕様では、スロープの軽量化(約4.5kg)と”4人乗車モード”から”車いす乗車モード”への切り替えを軽く行えるよう設計変更しています。
駆動方式は2WDと4WD。エンジンはN-BOX、N-BOXカスタムともに、NAとターボが用意されるようになりました。
ホンダ N-BOX スロープ

ここ数年、軽自動車の売上No.1を堅持しているホンダ N-BOX/N-BOX カスタムが2023年に3代目へと進化。それにともない”車いす仕様車”も改良を受けました。
そのなかでも大きなポイントは、「スロープ」を車名に追加したこと。これにより介護はもちろん、日常生活の楽しみ方を広げるアイテムとして位置づけられました。
普段は荷室の床として使うことができるスロープは、十分な強度を備えており、重い荷物を積載することが可能。くわえて電動ウインチを使えば、カートに乗せた荷物を一気に積み込むことができます。
いっぽう、車いす利用者が乗車する際にはスロープは折りたたまずに垂直に格納される設計。
車いす用の電動ウインチベルトは、巻き取り速度が2段階で調整可能だったり、左右にベルトの長さを自動的に調整してまっすぐ巻き上げたり、さらには車いす固定位置に近づくと巻き取り速度をゆるめるなど、行き届いた工夫が魅力です。
ほか3代目N-BOXのトピックとして、スマートフォンからクルマのエアコン操作やクルマの位置確認などができるほか、車内Wi-Fiにスマートフォンやゲーム機などを接続して自由に楽しむことができるHonda CONNECTと、先進安全運転システムのHonda SENSINGが標準装備されています。
パワートレインは、N-BOX、N-BOXカスタムともに660cc自然吸気DOHCエンジンとCVTの組み合わせ。駆動方式は2WDと4WDが用意されます。
ホンダ ゼスト 車いす仕様車

ホンダ ゼストの車いす仕様車は、N-BOX登場前の2006年から2012年まで販売されていました。
床下まで届く一体型テールゲートを採用し、スロープの角度を10度に設定。さらにスロープは、表面にノンスリップ加工を施した軽量アルミの引き出し式とされました。
またスペアタイヤを廃止してパンク修理キットを搭載することで、リア空間の低床化に貢献しています。
室内は、リアシート付きタイプとリアシート無しタイプがあり、乗車定員はそれぞれ4名(車いす乗車時は3名)と3名(車いす乗車しないときは2名)になっています。
ダイハツ アトレー スローパー

2001年から販売されているのが、1BOXのアトレーをベースにしたダイハツ アトレー スローパーです。
当初、車いす乗車時は3名の定員でしたが、2005年の改良で折りたたみ式の補助シートをオプション装備することで4名乗車を可能とし、車いす利用者のとなりに介助者が乗車できるようになりました。
またキャブオーバーレイアウトの利点を活かした車いす乗車スペースは、幅770mm、奥行き1,645mmと広いので、大きめの車いすでも乗車可能。電動ウインチベルト、リトラクタブルスロープ、リアヒーターなども標準装備です。
エンジンは直列3気筒ターボのみで、タントにはない4WDモデルが用意されていることもポイントです。
ダイハツ ハイゼット スローパー

ダイハツ ハイゼット スローパーは、アトレー スローパーの廉価版といった位置づけ。
ハイゼットカーゴをベースとした室内のレイアウトは、アトレー スローパーと同様。折りたたみ式の補助シートを装備した4人乗りで、電動ウインチベルト、リトラクタブルスロープ、リアヒーターなどは標準装着です。
アトレーから外されるのは、電動格納式ドアミラーやLEDヘッドランプ、室内のオートエアコン、LEDルームランプ、パワースライドドア、安全装備のADBやサイドビューランプなど。
エンジンもノンターボの直列3気筒にすることで、新車価格を低く抑えてます。
福祉車両の減免制度はどうなっているの?

福祉車両を購入(障がいのある方が運転)する場合は、国や自治体によって税金の減免を受けることができます。
まず車両価格にかかる消費税がありません。新車はもちろん中古車にも適用されるほか、納車時までに取り付けられるオプション用品などにも消費税がかかりません。
エコカー減税は、一般車両と同様、一定の環境性能をみたしていれば受けることができます。
軽自動車税および環境性能割は、自治体によって基準や条件が異なりますので、住んでいる地区の税事務所または福祉事務所で確認してください。
現車を見るなら専用ディーラーへ

各自動車メーカーは、一般的なディーラーとは別に福祉車両に強い専門スタッフと実車を展示する専用のディーラーを各地に展開しています。
ダイハツ、ホンダは、それぞれ「フレンドシップショップ」、「オレンジディーラー」という独自の名前を設定し、ここでは実車で車いすの乗せ降ろしを体験できるほか、専任スタッフから詳しい話を聞くことが可能です。

これまで車いすを載せることができるクルマといえば、室内空間や乗車委員、エンジンパワーの関係でミニバンタイプが主流でしたが、ここ数年、軽自動車クラスへの注目度も高まってきています。
基本的な装備は各車横並びといった印象ですが、こまかく見ると通常時の乗車定員や車いす利用者をふくめた後席の快適性、駆動方式やエンジン、さらには装備や仕様にも違いがあります。
ご家庭で使う場合は、車いすの乗せやすさ、車内の固定方法、スロープの角度や長さなどを比べて、車選びをすると良いでしょう。