トヨタ・フィットとは
ホンダ・フィットは5ドアハッチバックを基本とするホンダのコンパクトカー。
■ 初代
トヨタが1999年にヴィッツを発売すると1000-1500ccクラスの国内コンパクトカー市場は一変、それまでホンダが販売してきた「ロゴ」は古さが目立っていた。
そこでホンダはロゴの後継として新しい1300ccクラスのコンパクトカーとして2001年にフィットを発売。
フィットは全高をタワーパーキングに入るぎりぎりの1525~1550mmに設定し、その高さを活かした広い室内空間を誇った。
愛らしい大きな目のようなヘッドライトと、それを避けるように前方に絞りこまれたスポーティーなボンネット形状、クリーンでまとまり感のあるシルエットのボディを全くの新設計である「センタータンクレイアウト」と呼ばれる配置をとったプラットフォームに載せた。
このセンタータンクレイアウトは、前席下に燃料タンクを配置することでリアシートまわりの床を低く広く取ることが出来るようになった。これにより、リアシートの座面を引き上げることで背の高い荷物を積むことが出来る。
またセンタータンクレイアウトは車両旋回方向の慣性モーメントの低減にも貢献しており、このフィットは非常に素直で限界の比較的高い優れた操縦性・旋回性能を持っていおり、当時「(速度は違うが)タイプRと同じ動き方をする」と評された。 一部には乗り心地が固いとして不評であったが、スポーツカーを多く作っていた時代のホンダらしい味付けである。
エンジンはL13A型 1300cc 直4 SOHC i-DSIで63kW(86ps)/5,700rpmと119Nm(12.1kgm)/2,800rpm。i-DSIというのはツインスパーク(ツインプラグ:点火プラグを各気筒毎に二本づつ配置)であるが、
アルファロメオで有名な一般的なツインスパークと比べ、二本のプラグの点火タイミングを微妙にずらして制御し燃焼をコントロールしている。
この方式のデメリットとしては、ヘッド周りでスパークプラグが取るスペースが大きくなるためバルブを大きく取ったりマルチバルブ化したり可変バルブタイミング機構を組み込んだりが難しいことである。
当時既に殆どの乗用車が4バルブ化していた時期にあってこのフィットは2バルブと珍しいものであった。しかし実際にはこのエンジンは当時として驚異的な燃費性能(23km/l)を実現し、かつパワーもライバルと比べてむしろ優れていた。
当初はトランスミッションはCVTのみで、MTはおろかマニュアルモードやパドルシフトも備えていなかった。
当初のグレード構成は豪華な方から「W」「A」「Y」となり、それぞれにFFのほか4WDが選択出来る。。すべて1300ccにCVTという同一のパワーユニットを持ち、装備のみ異なる。
一番下の「Y」ではパワーウィンドウや集中ロックが装備されない等、現在から見ると驚くほど簡素なものであった。
センタータンクレイアウトの恩恵で、リアシートはすっきりとフラットに収納でき、ちょっとしたワゴン車のような広い荷室として使うことも出来る。ホンダの広報写真ではフロントタイヤを外したマウンテンバイクを積む様子もある。
もちろん引き起こして普通に座席として使った場合も優秀なもので、高い全高から来る頭上空間、前席下のタンクの膨らみからフットレストのように足を自然に置くことが出来る点など、乗用車としての使い勝手も良い。
フィットは大ヒットし、最初の一か月で販売目標の6倍である4万8000台を売り上げた。また商業的に成功しただけでなく、デザインや車としての出来が秀逸であるとしてグッドデザイン賞と日本カーオブザイヤー、RJCカーオブザイヤーを受賞している。そのまま勢いは衰えず、2002年には年間販売台数でそれまで33年間首位であったカローラを抜き、その年に日本で一番売れた登録車となった。
その2002年、新たにL15A型 1500cc 直4 SOHC VTECエンジンを搭載した「T」グレードが登場。
車名の「Fit」エンブレムの「i」の文字の点が1300ccは赤色、1500ccは青色と差別化されている。
この「T」には7スピードモードつきホンダマルチマチックS(擬似的な段を7つ設けたマニュアルモードつき無段変速機)が新たに設定。
少しスポーティーなグレードという位置づけで、専用の大型テールゲートスポイラーをオプションで選択出来る。
しかし意外にも5MTが設定されたのはこの「T」の追加時ではなく、2004年まで待つこととなる。中古車としてMTのフィットを狙う場合は必然的に中期以降となる。
2004年、MT追加とグレード体系の変更、CVT車の一部グレードにパドルシフトの追加等を伴うマイナーチェンジ。これ以降を中期型と呼ぶ。
2005年、フェイスリフトを含むマイナーチェンジ。これ以降を後期型と呼ぶ。
■ 二代目
2007年、フィットは初めてのフルモデルチェンジを迎える。
先代が成功したこともありセンタータンクレイアウトを継承、全体的なスタイリングも先代を踏襲した。ボンネットはさらに短くなり1.5BOXフォルムが強調された。
エンジンはL13A型およびL15A型と型式のみは変わらないが、1300ccモデルではi-DSI(ツインスパークシステム)を廃止し気筒休止システムを備えたi-VTECを採用。
1500ccモデルは先代では備えていた気筒休止システムを廃止しパワーを重視した。
その結果、1300ccで73kW(100ps)/6,000rpm、1500ccで88kW(120ps)/6,600rpmを実現し、同クラス内では優れた出力を誇った。
RSグレードのFFモデルではMTが設定された。
2010年、マイナーチェンジ。これ以降を中期型と呼ぶ。
RSグレードをさらにスポーティーに。同クラスでは唯一となる6速MTが選択出来るようになった。
さらに大きな話題となったのがハイブリッドの追加だ。「ホンダIMA」と呼ばれる「モーターでエンジンをアシストする」タイプのハイブリッドシステムを搭載した。
ハイブリッドモデルは中古車としては玉数はあるものの相場が高値安定である。
2012年、再度マイナーチェンジ。これ以降を後期型と呼ぶ。
先のマイナーチェンジで追加された「ハイブリッド」と「RS」を合わせたような「ハイブリッドRS」が追加される。
■ 三代目
2013年、三代目フィットがデビュー。
先のアコード等で採用された「EXCITING H DESIGN!!!」とホンダが呼ぶデザインコンセプトに則り、顔つきやシルエットも大きく変わり、「より立派に」なった。
この代からハイブリッドはデュアルクラッチ式の新方式となり、燃費性能でそれまで首位にいたトヨタ・アクアを抜き、国内市販車トップの燃費となった。
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